雪バラと紅バラ
むかしむかし、ある森の近くに、小さな家がありました。家の前には、小さな白いバラの木と赤いバラの木が一本ずつ並んでいます。そこには雪バラと紅バラという、仲のよい姉妹が、お母さんと暮らしていました。
ある寒い冬の晩。トントンと、家の戸をたたく音が聞こえます。
「だれかが雪に困っているのかしら」
お母さんが戸を開けると、なんと、大きなクマがたっています。3人はびっくり。でもクマは、ブルブルふるえながら言いました。
「寒くてこごえそうです……。ちょっと火にあたらせてもらえませんか」
かわいそうに思ったお母さんは、すぐにだんろのそばへ連れていきました。
「よかったねクマさん」
雪バラと紅バラも、クマの体についた雪をやさしくはらってあげました。
その日から、クマは毎晩やってくるようになりました。いっしょに遊んだり、本を読んだりして、楽しい時間をすごしたのでした。
春がくると、クマがいいました。
「これからは、森で暮らします。あたたかくなると、わたしの宝物をぬすむ悪いこびとがあらわれるんです。そいつをつかまえなければ」
3人に見送られて、クマは森へ帰っていきました。
しばらくして、森でたきぎを拾っていた雪バラと紅バラは、倒れた木の上で年をとったこびとがあばれているのを見つけます。木の割れ目に長いヒゲがはさまって、抜けなくなっていたのです。そこで雪バラが、ハサミでヒゲの先をチョキンと切ってあげました。
ところが、こびとはカンカンです。
「よくも。わしの大事なヒゲを切ったな!」
そうどなると、木の根元にあった金貨の袋をつかみ、ピューッと走りさっていきました。
それからも、2人は何度となく、このこびとに出あいます。二度目は、魚に川へ引きずりこまれそうになっていたところを助けてあげました。でもこびとときたら…
「グズグズするな!もっとやさしくしろ!」
このようにお礼をいうどころか、いつも文句をいって、2人をあきれさせるのでした。
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