【2670】ABCマートが米ラクロス社を買収…

株マイスター バックナンバー(2012年7月12日更新)

【2670】ABCマートが米ラクロス社を買収…その“失敗しないブランド戦略”から、優良企業の真髄が見えてくる!

ラクロス社の買収

シューズ販売チェーンの【2670】ABCマートは6日、米ナスダック上場の靴製造・販売ラクロス社を約1億3800万ドル(約110億円)で買収すると発表しました。米国子会社を通じて株式公開買い付け(TOB)を実施してラクロス社の全株を取得し、完全子会社化する方針です。

今回の買収は、ブランドの品揃え強化と海外展開の加速が狙い。友好的な買収であり、ラクロスの取締役会から承認を得ているといいます。ABCマートによる海外企業の買収は、95年の「ホーキンス」ブランド買収以来17年ぶり。

米ナスダック市場に上場しているラクロス社は「ダナー」と「ラクロス」という2つの人気ブランドを持つメーカー。ABCマートの小島穣取締役は会見で「メイド・イン・アメリカのプレミアムやブランディング、技術力に魅力を感じた。今後は日本、韓国を中心にアジア展開を考えている」と語りました。

マーケティングの強化

これまでも「ホーキンス」や「バンズ」といった人気ブランドを傘下に収めてきた同社ですが、一貫しているのは「獲得したブランドを“自社のカラー”に染めない」という点。ブランド名や商品展開には基本的に手をつけず、マーケティングの強化などでブランドの育成・強化に専念するのがABCマートの戦略です。「ABCマート」=「販売店」という基本イメージを壊さず、保有ブランドを下支えする“縁の下の力持ち”に徹しているのが、成功を続けている要因とも考えられます。

一からブランドを育成するのは非常に時間がかかるうえにリスクも大きいため、すでに成功しているブランドを買収するというのは賢明な手段です。しかし、買収したブランドをどのように扱っていくかで、その後の動向は大きく変わってきます。

ブランド戦略

ABCマートの戦略と対極に位置するのが、楽天やSBIのような「メガブランド」戦略。大本の企業名にブランド力を集約し、スケールと認知度、信頼性で勝負していくのが特徴です。

メガブランド戦略をとる企業の例として、【4755】楽天を挙げてみましょう。楽天はイーバンク銀行を買収し、その社名を「楽天銀行」に変更。DLJディレクトSFG証券を買収し、社名を「楽天証券」に変更。さらに、電子マネーの「Edy」を買収して、「楽天Edy」に変更。このように、楽天が買収した企業や、楽天が提供するサービスはほぼ全て「楽天」という名前を冠しています。

「楽天」を頭につけるだけの単純なやり方。このような「メガブランド」戦略は、果たして本当に企業価値を高める効果があるのでしょうか。

メガブランド戦略の場合、「所有している」という事実を明確にしたいがために、獲得したブランドに自社名を付けたがる、もしくは丸ごと買収元の企業名に変えてしまうという傾向があります。しかし、これがかえってブランドイメージを濁してしまうのです。

楽天という名前には確かに知名度と信頼性がありますが、「楽天」がもつイメージはあくまでも「楽天市場」というオンラインショッピングモールです。ネットショップというイメージが強い「楽天」というブランドを、買収した他業種の企業名に次々と付けてしまったために、そのブランドイメージは非常に曖昧なものになってしまいました。

ABCマートは、買収したブランドに「ABCマート」という名前をつけません。先にも触れた通り、「ABCマート」=「販売店」というブランドイメージを維持しているため、買収したブランドのイメージを濁さずに済むわけです。

ある企業を買収したとき、その企業名に自社の社名をつけるというのはよく見られますが、これには買収元企業の“自己顕示欲”のようなものも感じます。

【8473】SBIホールディングスがイー・トレード証券を買収した際、当初の企業名は「SBIイー・トレード証券」でしたが、その後「SBI証券」に変更されました。この社名推移には、買収元であるSBIの“エゴ”が如実に見てとれます。

ABCマートの場合はどうでしょうか。同社が「ホーキンス」や「バンズ」といった人気ブランドを保有しているという事実は、実際あまり知られていません。これこそ、ABCマートがこれら有名ブランドを所有している事実を“誇示していない”ことの何よりの証明です。自己顕示に奔走することなく、ひたすらブランド育成に注力するその姿勢は、他企業からも見習うべき点が多くあるといえるでしょう。

ABCマートは、ブランド戦略で成功し続けている数少ない企業。長期に渡って利益成長を続けてきたその実力は本物であり、その動向を見守る価値は充分ありそうです。

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その後のABCマート

2012-07終値:3160円
2023-05終値:7580円
コラム掲載以降、右肩上がりの上昇で2倍超えです。

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