がさつなようでがさつな人と、いかついようでいかつくない人
こんな長いタイトルいけるんだろか?
そもそも「がさつ」って漢字ないんだっけ?
最近の相棒に聞いてみる。
がさつってわかります?
どうやら漢字はないらしい。
続けてがさつな人のイメージを聞いてみると、
まるで小学校五年生ひなた君の作文みたいな返事がきた。
ひなた君の書いた「がさつ論」は間違いなくがさつな感じがするが、
これは、怖い夢に出てきたのかな?
ひなた君の心の闇が少し気がかりだけど先生は好きだぞ。この作文。
ではでは、このまま「がさつ」で書いていこう。
電車の4人がけの椅子の端っこが空いてた。
が、どう見ても空き幅が狭い。
先は長いんで座りたい私はとりあえず座ろうとした。
同時に右側のがさつ男がこちらを無関心な眼で見ながら、背もたれに背中を押しつけて、がさつスペースを拡張した。
仕方ないのでエビが後退するように座ってみた(笑)
案の定、自分の身体の幅を2/3位にしないと、まともに腰かけることもままならない。
思いがけず、
「だっちゅーの」(古っ!)
のセクシーポーズになる私。
「狭っ」
と日頃の独り言の癖が出てしまう。
「無理無理、ケッ」と立ち上がり、がさつ男の前に立った。
すぐに私の身体の半分位の小柄な女性がキレイにおさまった。
なかなかジャストフィットで微笑ましい。
なぜ「がさつ男」を「がさつ」と認識したかというと、
足の開きっぷり。無駄に開きすぎ。
足を前に出し過ぎ。混雑しているのにけっこう投げ出している。
スマホゲームに夢中になり手を激しく動かしたり、貧乏ゆすりをしたり、と動きが煩わしい。
集大成として、先のがさつスペース拡張行動。
がさつ確定。
その4人掛けの面々は、向かって左から
ちょっといかつい戦闘能力の高そうな細目オヤジ。
経理畑36年眼鏡あり全身紺色コーデオヤジ。
がさつ男。
ジャストフィット姉さん
の面子である。
ふと見ると経理畑もスマホを見ながら腕を動かしている。
経理畑とがさつ男がオンラインで対戦しているのか?
と思うほど、二人とも肘をこすり合わせながら熱中している。
細目筋肉が動いた。
「よぉ。よぉ。狭いから当たるのはしょーがねぇけどよぉ。手を動かすのはやめてくんねぇか?」
細目筋肉は若者ではないので、文字に起こすならヨーヨーでも、ヨーメーンでもない。
経理畑はマスクをしていたのではっきりとは分からないが、おそらく何も言葉は発していない。
無言で、細目を見ることもなく、横に張っていた肘を気持~ち狭め、動き控えめにしたものの、止めない。
がさつ候補発見。
と私の心メモに記される。
がさつ男は経理畑を挟んでの細目筋肉発言だからまったく気にもかけていない。
相変わらず派手な動きで、くたびれたスニーカーが私の靴にたびたび触れてくる。
細目は経理畑を数秒眺め、あきれたようにその細目を閉じた。
数駅後、主要駅に到着した。
乗降共に大量の人が動く駅だ。
目の前のがさつ男に降りる気配なし。ちっ・・・・・・。
細目が立ち上がった。降りるのだ。
しかし、その位置からでは多くの人を押しのけて強引に突破していかないとドアまではたどりつけない。
先ほどの「YO!YO!」口調や、細目から発せられる戦闘オーラ。
「こっち側から降りるなら、がさつ男の足を踏んででもスペースを空けるしかない」
そう身構えていると案の定、こちら側に鋭い細目を向けている。
「来る・・・・・・。」
つり革を握る手に力が入る。
私の周りの乗客もほとんど降りず(中ほどだからねぇ)、細目の筋肉の挙動に神経を研ぎ澄ませているのが伝わってくる。
次の瞬間。
「すいません、降ります。悪いね。すいません。」
細目は戦闘スキルを微塵も発せず、とても丁寧にそう言いながら、
誰かを強引に押しのけることは一切せず、見事に降り切った。
驚愕と安堵。
そして皆が思っただろう。
「なんて礼儀正しい細目さん」
と。
細目空きスペースは間髪入れずに大人しそうな兄さんがスマートに奪い取った。
経理畑の肩の力が抜け、狭まっていた肘が再び広がる。
そういえば、細目から経理畑への要望はごくごく正当であった。
細目筋肉質であろうと見た目で判断してはいけない。
私はそう深く反省し、目の前のがさつ男もただゲームに夢中なだけで、本当は気遣いのできる非がさつ男なのかもしれない。
優しい気持ちになりかけた私に激しくぶつかりながら次の駅でがさつ男は降りて行った。
無言で。他のお客さんを押しのけながら。
がさつはがさつ。
いかついはいかつくない。
世の中何とも難しい。
がさつ男空きスペースに座った私に
経理畑の左肱が当たった。
がさつ確定。
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