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愚痴を発散させて欲しい

久しぶりに北南さんの話である。
北南さんはこの記事由来の命名である。

その後の経過もちらりと書いた。


最近の北南さんは、とにかくボーッとしている。
ちょっと本格的に冬眠モードに入ってしまいそうな勢いである。

色々考えて、北南さんには得意とする業務を振るように心がけてきた。
ゆっくり時間をかけても構わないからとにかくミスがないように。

完成したら二度ほど自分で見直して確認して、それから提出するようにすれば、ミスも気づきやすいよ。

と話し、通常ならだいたい30分もあれば完璧に仕上げられる作業を、午前中いっぱいかけようが、気にせず任せてきた。

先月末から諸事情により一人の社員が半月ほど休暇を取ることになり、同時に時期的な要因から仕事量が突然増えてしまった。

やむを得ず北南さんにも仕事を割り振って、総当たりで取り掛からないととても回らない。

そこにきて、冬眠モードに入りつつある北南さん(笑)

「なんで俺やネリケシさんばっかりこんな忙しいんっすか!」


若い子らがあからさまに愚痴を言ってくるようになってきた。


北南さんは、やはり気分によるのか仕事の出来がころころ変わる。
しっかりと出来る時もあるにはある。


出来ない時は、完成品の8割が間違っていてチェックも含めて非常に時間がかかるしストレスになる。
これなら北南さん以外に任せるか、自分で最初からやってしまった方がどれだけ早く正確に仕上がることか・・・・・・。


昨日はさすがにひどく、温厚な私もとうとうキレてしまった。

一番腹立たしいのはやる気のなさだ。

間違いはもうしょうがない。私だって常に完ぺきではない。

確かにめちゃくちゃ忙しいけど、人より時間がかかろうがそれでミスが減るのであれば、もう任せるしかない。それほどにいっぱいいっぱいだ。


昨日の北南さんは、まったく手が動かなかった。

心ここにあらず。
いかにして仕事をしないで時間を費やすかに注力しているようにしか思えなかった。

まず、仕事に取り掛かるまでに30分以上を要する(笑)

指示書を、まるで誤字脱字を探す校正係のようにとにかく見ている。
読んでいるのかはわからん。とにかく見続ける。

時折、照明に透かしてみるような仕草をしながら見続ける。

いやいや、透かしとかないから・・・。

謎の行動に周囲の人間も首を傾げながら仕事を続ける。

そうして刻々と時間は過ぎて行き、1時間以上経ったところで、

ふぅむ

と重々しく呟く声が聞こえてきた。

そして、

「ネリケシさん、これはフォーマット通りの方法で返答していいでしょうか?」

えぇぇ?今、その段階??(笑)
と驚愕しながらも、

「大丈夫っすよ。いつも通りでお願いします」
「わかりました」


グググッと大きく伸びをして・・・トイレへ立つ北南さん。


や・・・やらんのかい!!!!

周りから無言のツッコミが炸裂する。


トイレから戻ったものの、
カタカタカタっと短くキーボードを叩いたと思うと、

手が止まる。

静寂。

静寂。


ちらりと横を見るとモニターをジーっと眺め、
書類をジーっと眺め、
彫像のように固まっている。


時折、後ろを人が通ると、

カタカタッ

と手が動く。


そして・・・静寂(笑)


・・・・・・・3時間後

「確認お願いします」

と提出された書類は、合っている箇所を探すのが大変なくらいに間違っていた。


「これ、最後自分で確認してみました?」
「はい、もちろん!」


そう言いながらちらりと私のモニターの時刻表示の辺りを盗み見る北南さん。
お昼休憩の時間が近づいている。


悪いように考えたくはないが、お昼に合わせて仕上げてきたのが見え見えである。


「もうお昼だからとりあえず休憩入ってください。確認しておきます」


そう言って書類を預かると、嬉しそうな顔をしてササッと休憩にはいった。


他の社員たちは北南さんの5倍近い量をこなし、昼休みも削って必死で仕事を続ける。

たった一つの案件を午前中いっぱい時間をかけて持ってきて、時間ぴったりに休憩に入る北南さんに苛立ちの視線が飛び交う。

提出された書類をチェックすると、もうしょっぱなから間違っている(;´∀`)
途中まで確認を続けたが、合っている箇所を探す方が難しい。


言葉の整合性がまったくとれてない。
フォーマット通りと常々言っているのに、独自の装飾が盛られていて、
規定の書式での返答を求める相手にはとても提出できるものではない。


本当はやってはいけないことだが、離れた場所で食事をとっている北南さんのところに行き、

「申し訳ないけど、休憩終わったらとりあえず全てやり直してください。全て何もかも」

とつい言ってしまった。


弁当を食べながら書類を見た北南さん。

「わかりました。結構まちがってますねぇ~」


・・・・・。

何かがおかしい(笑)
何故そこ、他人事目線?


無言で喫煙所へと向かった。


追いかけるように、私が可愛がっている若いやつが入って来た。


「大丈夫っすか?珍しいっすね、ネリケシさんがぶちかますの笑」
「すまん。何もかも間違えててキレた。休憩遅くなって悪いな」


「孫に怒られますよ、じいじ笑」
「うるせぇ笑」


朝イチでサプライズの話しをしたので、今日の私は、からかわれ役だ(笑)


「午前中で一件っすよ、それでもダメでしたか」
「出だしからな。また使い回しのミスだ、あれは」


「まじすか・・・。」
「どうしたらいいんだ?」


つい、弱音が出てしまう。

タバコを吸い、孫の写真を眺め、頭を冷やして戻った。


午後になり、北南さんが私がつき返した仕事を再開するのを見計らい、気持ちを落ち着けて、


「ここは、これ。そっちは、こうね。完成したらプリントする前にいちおう声かけて。よろしくです!」


約4時間後・・・。
プリンターの動く音。
席を立つ北南さん。


当たり前のようにプリントされた書類を持ってくる。

「ダブルチェックお願いします」
「う…うす」


とりあえずツッコミは入れずに受け取る。


中盤までは訂正されている。
が、後半になると直ってない。
いくつもミスが見つかる。


「・・・・すまん。こことこことここ。違ってるよ」
「あっ、いけね。今日はあきらめます」


終業1時間前。
北南さんの中では仕事が終り、ゆーっくりと、そわそわと片付けが始まる。


結局その日、北南さんが仕上げた業務はゼロである。


無言で喫煙所に向かった。
グワーッと叫びたくなった。


私だけでなく全体のモチベーションも雰囲気もそうとう悪い。
いよいよ決断をするべき時なのかもしれない。

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