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33【恋愛小説もどき×親友との思い出】

不可能だと知っていながらも、
私は今手にしているものの全てが、変わらないことを望んだ
それでも、やはり私たちは常に変化し続ける
川の流れのように、決してとどまることはできない

父と弟が東京に行く日の朝
弟のつるつるとした肌を見ながら、思った

次に会った時は、髭が生えているかな
弟は父に似て、足が大きい
きっと背も高くなるやろうな

学生の私にとって、東京はとてつもなく遠く感じた
今弟と離れたら、、、
今度会えるのは、いつになるんやろう、、、

私はこの時、すでに自分の進路を決めていた
私は国立の看護学校を受験することにした
医療系に強い進路の先生によると、
その学校はものすごいスパルタ校として有名で、
恐らく西日本で一番厳しいだろうと、、、
でも、附属の国立病院に就職して数年働けば、
学費が免除になる!!
それは、かなり魅力的だ

看護学校に行ったら恐らく、
普通の大学生のように、生ぬるい生活はできない
おっちょこちょいの私は、ついていけるだろうか
いや、何がなんでも卒業しなければならない
そうなったら、、、
弟とは全く別の生活を送ることになるんやろうな、、、

そんなことを考えているうちに
父が出発の準備を済ませて呼びに来た
家族全員で玄関を出る
玄関前には弟を慕うたくさんの人が集まってくれていた

「きゃーまた絶対会いに来てね!!」
「元気でなー!」

私や母はいつの間にか弟から離れた場所に立っていて
弟の周りにはたくさんの人の群れができていた
弟は、男友達が多く、女子のファンも多かった
可愛がってくれた近所の人たちも駆けつけてくれた

私たちが大阪に引っ越してきて今年で5年目
その間に弟は多くの人と繋がって、
たくさんの思い出を作ったんやな、、、

「私らは、家族やからいつでも会えるからね、
 お友達とゆっくりお別れする時間作ってあげようね」
 母がうっすら涙を浮かべながら言う
 私も涙を流しながら、うなずく

「ふっふえ~ん」

うっかり存在を忘れそうになっていたけど、
横で妹が号泣していた
妹は人前でこんな風に泣くタイプではない
涙を堪えきれなかったのだと思うと、
思わずもらい泣きした

父に促されて車に乗り込む弟と目が合った
目を真っ赤にしながら、手を振っている
私と母と妹も、弟に手を振り返す

そして、父が車の運転席で
「ほんなら、いくわ」
とシンプルに告げ、そのまま東京へ出発した

あまりにもあっけなかったけど、
それが、私たち家族全員が揃った最後の日になった

その後、私は普通にバイトに行った
いつも通りの日常、
よりむしろ忙しくしていないと
寂しさが押し寄せてきそうだった

その日は、バイト先にきりんさんが来ていた
しかも、かなりお酒に酔っているようだった

嫌な予感しかしない
なるべく関わらないようにしようと思った









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