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34【恋愛小説もどき×親友との思い出】

きりんさんがひどく酔っている
こんな時に限ってオーナーがいない

「困ったことがあったら連絡して、すぐ戻るから」

そう、いつものことだけど、、、オーナーは恋人と消えた

こんな時は、絶対に、きりんさんと関わらない方がいい
私は極力あっさりと接客をして、
そそくさと宴会の行われている個室を後にした

「ねえ、君はカフカを知ってる?」
「し、知っていますよ」

びっくりした!忍びか?
あんなに酔っぱらっていたのに、
いつの間にかきりんさんが目の前にいる
動揺で心臓がバクバクいっている
きりんさんは、こんな風にいつも私に質問をする
職業柄なのか知らないけど、
こんな風にされると、、、
毎回面接をされているような心境になる

「君は付き合っている人いるの?」
「いないです
 でも、好きな人はいます」
「どんな人が好きなの?」
「どんな人?えっと、、、そうですね
 私は、その人の、才能と人柄と知性に惹かれました」

本当に、面接みたいな会話だ、、笑

「僕は、、、」
きりんさんは何か言いかけて、
その場にうなだれるような感じで
座り込んでしまった

「きりんさん、大丈夫ですか?」

私もしゃがんで、きりんさんの顔を覗きこもうとした
突如、きりんさんの両腕が伸びてきて、私の身体を捉えた
一瞬何が起こったのか分からなかった
私はそのまま、きりんさんに抱き寄せられた

「ちょっと、やめてください」
抵抗しようとしたが、ものすごい強い力だった
「ごめん、ちょっとだけ、、」
きりんさんの声が震えていた
多分、きりんさんは泣いている

私は、仕方なく、そのままでいることにした
泣いているきりんさんの背中をさすった
「酔っているからかな、ごめん、急に情けなくなって」
「別に、情けなくはないですよ」
「ごめんね、急に、その、泣いてしまって」


「急に泣きたくなる気持ち、分かりますよ、、、
 私もいま、寂しいので、、、」
私は、笑顔できりんさんに言ったつもりだった

私の言葉を聞いたきりんさんは、一瞬驚いた顔をした
そして、とても悲しい顔になった

「君は、寂しいなんて、言わない方がいいよ」

私は、この時のきりんの言葉を今でも守っている
寂しくても、人には言わない
ん?けどよく考えたら、きりんはどうなんだ
自分は泣いていたのに、、、
いや、そうじゃなくてきっと、
私の「寂しい」は実感が伴っていて
聞くに耐えないほど、重たいのだろう、、、

オーナーが戻ってきた
「何やってるの!」
抱き合っている私たちを見て言う
そう言っているオーナーの足元を見て私も思った

なにやってるの!

オーナーの足に何故かブラジャーが絡まっていたのだ
私は傍にいるきりんさんに気づかれないように
オーナーに口パクで知らせようとした
「ブ、ラ、ブ、ラ!!」
オーナーはそれを見てゲラゲラ笑いだした

ああ、失敗した!

そして、とうとうきりんさんが
オーナーよりも先にブラに気づき、
ブラを手に取った!
そして、、、自分の頭に乗せた

「アーニャだよ~」






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