バラの花と林檎の木
黄皓さんは高身長、高収入のイケメン実業家です。
人気番組『バチェラー・ジャパン』で一躍有名になりました。Amazonプライム・ビデオで配信されたこの番組は、カテゴリーとしては、恋愛リアリティショーになります。
ハンサムで経済力のある独身男性が、ゴージャスなデートをしながら最愛の女性を選ぶ。そういう企画の番組です。男性版(バチェラー)と女性版(バチェロレッテ)があって、黄皓さんはその両方に出演されました。
運命の女性を選び、番組内でプロポーズした黄皓さんは、ほどなく結婚します。仕事も恋愛も家庭も、なにもかも順風満帆だと思っていました。
黄皓さんは聡明で、仕事もできる。ハンサムでお金もある。いわゆる「リア充」の頂点にいた方です。そして、メディア出演によって、さらに「知名度」と「発信力」を手に入れました。
まさに鬼に金棒です。
こうなると、何でも手に入れることができて、何でも夢が叶えられそうです。お金に不自由なく、素敵な女性と夢のような毎日が永遠に続くはず。勝手にそう思っていました。
インフルエンサーと呼ばれる方がいます。
強い影響力を持ち、企業案件が持ち込まれますから、お金に不自由しません。その影響力が行使されるのは、SNSです。しかし、その代償は小さくありません。
私生活が公開されることで、プライバシーを失うケースがあります。また、アンチの批判に晒されることも珍しくない。エゴサーチで神経をすり減らす人もいます。影響力の源泉である「フォロワー数」や「いいね!」に、知らず知らず振り回される。
世の中に「完璧な男性」などいるはずもないのに、黄皓さんクラスになると、そういう風にふるまうことを求められる。しかも、優秀な彼は、それができてしまう。しかし、実際の自分(オフライン)とインフルエンサーとしての自分(オンライン)には、やはり乖離が生じてしまう。
そのあたり、以下の動画がとても興味深いものでした。
リアルな自分が、オンライン(SNS)に引っ張られてしまいます。その結果、現実の人間関係に希薄化が起こり、会社や家庭でのコミュニケーションが毀損し始める。そんな印象を受けました。
恋愛リアリティショーで、黄皓さんにはライバルがいました。
杉田陽平さんという、現代美術家です。彼は自分の好きな言葉として、思いを寄せる女性にこの言葉を伝えました。
宗教改革で有名な、マルティン・ルター(神学者)の言葉です。いかにも芸術家らしい言葉のチョイスです。
明日、地球が滅ぶという混乱のさなかであっても、自分はなすべきことをやる。困難や逆境、不確実性に直面しても、自分を見失わない。外部環境に影響されず、揺るがない。木を植える行為そのものに価値を置く。そういう考えです。
こうした姿勢は、現代のビジネス・エリートとは対極にあるものです。
現状を分析し、戦略を立案し、将来を予測し、目標を設定し、PDCAを回してパフォーマンスをあげていく。こういった姿勢からは「世界が滅ぶ前日に木を植える」という発想は絶対に出てこないです。ビジネスは無駄と無意味を嫌いますから。
『バチェラー・シリーズ』に選ばれるような方であれば、普通に考えれば、バラ色の人生が続いているように思えます。しかし、現実は必ずしもそうではない。有名になることの代償は決して小さくない。
バラの花と林檎の木。わたしは、愚直に「林檎の木」を植える側の人生でありたいです。バラの花を渡す側ではなさそうですし、タキシードも似合わないですから。
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