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バラの花と林檎の木

実業家の黄皓さんが、インスタグラムのストーリーズを更新。自身に関する一部報道を受け、思いを明かした。黄皓さんは番組でモデルの秋倉諒子さんと結ばれ、23年3月に結婚したことを報告した。しかし12月4日、夫婦は別居しており秋倉さんが黄皓さんに対し弁護士を立てて離婚を求めていると一部で報じられた。(Yahoo!ニュース)

黄皓さんは高身長、高収入のイケメン実業家です。

人気番組『バチェラー・ジャパン』で一躍有名になりました。Amazonプライム・ビデオで配信されたこの番組は、カテゴリーとしては、恋愛リアリティショーになります。

ハンサムで経済力のある独身男性が、ゴージャスなデートをしながら最愛の女性を選ぶ。そういう企画の番組です。男性版(バチェラー)と女性版(バチェロレッテ)があって、黄皓さんはその両方に出演されました。

運命の女性を選び、番組内でプロポーズした黄皓さんは、ほどなく結婚します。仕事も恋愛も家庭も、なにもかも順風満帆だと思っていました。

黄皓さんは聡明で、仕事もできる。ハンサムでお金もある。いわゆる「リア充」の頂点にいた方です。そして、メディア出演によって、さらに「知名度」と「発信力」を手に入れました。

まさに鬼に金棒です。

こうなると、何でも手に入れることができて、何でも夢が叶えられそうです。お金に不自由なく、素敵な女性と夢のような毎日が永遠に続くはず。勝手にそう思っていました。

インフルエンサーと呼ばれる方がいます。

強い影響力を持ち、企業案件が持ち込まれますから、お金に不自由しません。その影響力が行使されるのは、SNSです。しかし、その代償は小さくありません。

私生活が公開されることで、プライバシーを失うケースがあります。また、アンチの批判に晒されることも珍しくない。エゴサーチで神経をすり減らす人もいます。影響力の源泉である「フォロワー数」や「いいね!」に、知らず知らず振り回される。

世の中に「完璧な男性」などいるはずもないのに、黄皓さんクラスになると、そういう風にふるまうことを求められる。しかも、優秀な彼は、それができてしまう。しかし、実際の自分(オフライン)とインフルエンサーとしての自分(オンライン)には、やはり乖離が生じてしまう。

そのあたり、以下の動画がとても興味深いものでした。


リアルな自分が、オンライン(SNS)に引っ張られてしまいます。その結果、現実の人間関係に希薄化が起こり、会社や家庭でのコミュニケーションが毀損し始める。そんな印象を受けました。

恋愛リアリティショーで、黄皓さんにはライバルがいました。

杉田陽平さんという、現代美術家です。彼は自分の好きな言葉として、思いを寄せる女性にこの言葉を伝えました。

"たとえ明日世界が滅びると分かっていたとしても、それでもリンゴの木を植えるだろう"

宗教改革で有名な、マルティン・ルター(神学者)の言葉です。いかにも芸術家らしい言葉のチョイスです。

明日、地球が滅ぶという混乱のさなかであっても、自分はなすべきことをやる。困難や逆境、不確実性に直面しても、自分を見失わない。外部環境に影響されず、揺るがない。木を植える行為そのものに価値を置く。そういう考えです。

こうした姿勢は、現代のビジネス・エリートとは対極にあるものです。

現状を分析し、戦略を立案し、将来を予測し、目標を設定し、PDCAを回してパフォーマンスをあげていく。こういった姿勢からは「世界が滅ぶ前日に木を植える」という発想は絶対に出てこないです。ビジネスは無駄と無意味を嫌いますから。

『バチェラー・シリーズ』に選ばれるような方であれば、普通に考えれば、バラ色の人生が続いているように思えます。しかし、現実は必ずしもそうではない。有名になることの代償は決して小さくない。

バラの花と林檎の木。わたしは、愚直に「林檎の木」を植える側の人生でありたいです。バラの花を渡す側ではなさそうですし、タキシードも似合わないですから。

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