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ティラミス

 深夜0時、ティラミスを食べる。帰りがけにドラッグストアで買ったものだった。108円で安かった。  スプーンでティラミスの頭の方を掬い、口に運ぶ。ココアのかかったねっとりとしたクリームとスポンジ生地を咀嚼する。ふわふわとした食感と甘さが舌をとらえる。おいしかった。またスプーンでクリームを掬う。口に残っている生地を飲み込む。スプーンを口に運ぶ。咀嚼する。掬う。飲み込む。  食べることは本質じゃないのだ、と思った。その日はどうしようもなく寂しかったし、悲しかった。ひとと心を通じ

    • VTuberが分かる気がする

       一人暮らしをしている。家にいると当然そこには私一人しかおらず、独りだなあと思う。四六時中友達と遊んでいたって疲れてしまうし、大学は好きだけどやっぱり四六時中いたい場所ではない。家に帰りたい、と思うし、予定がない休日に安心する金曜日もある。でも次の日目が覚めて、ダラダラしていたら10時になって、外はぴかぴかの青空で風も涼しくてそれを散らかった部屋の中から見上げた瞬間なんかには、独りだなあ寂しいなあなんでもいいから誰かこの穴を埋めてくれないかなあ、と思うのである。  そういう時

      • 発熱

         一晩泊まった友人の家を発とうとして立ち上がると、ふらりと身体が傾いた。なんだか今日はやけに足元がふらふらしているのだった。念のためにと思って体温を測ると、38.1度あった。友人は私にカロナールを飲ませ、熱が下がるまで寝てから帰宅するようにと言った。  よく晴れたゴールデンウィークの昼下がり。寝ていると頭がぐわんぐわんとよく回る。地面が斜めになったり回転したりするような心地を味わいながら、私は自分の身体が自重のままに布団に沈み込んでゆくのを感じる。病気の時は、全身の感覚が鋭

        • 創作への欲求

           なんでも、創作できる人はすごいと思う。  大学に入学したころに少し話したっきりで、その後特に関わることもなければ友達になることもなかった人がいる。学部は同じなのでたまに講義室で見かけることもあるが、話しかけることも話しかけられることもない。こっちが一方的に、あ、○○さんだと思うだけで、視線が交わることはない。  その子はツイッターで絵師アカウントを運用していて、頻繁にイラストを描いては投稿している。版権絵とオリキャラのイラストの比率は半々で、版権絵に関しては私は全く詳しく

        ティラミス

          きりんは首を戦わせる

           きりんはその長い首を振り回し、ぶつけあって喧嘩をする。これにはネッキングという名前がついており、きりんのオス同士が互いの優劣を競うために行うそうである。あまりにそれが激しくなると、首の骨が折れて死んでしまうこともある。きりんは木刀を手に取る代わりに、己の長い首を使って鍔迫り合いをするのである。  きりんの首は、元々は木の高いところに生えている葉を食べるために長くなったものであろう(厳密にいえば、たまたま生まれた首の長い個体が木の高いところにある葉を食べられるというそのメリ

          きりんは首を戦わせる