能登半島ほぼ一周!夏の能登、加賀、越中道の駅スタンプラリー旅①
石川、富山、新潟の3県に跨る北陸道の駅スタンプラリーを進めていく中で、新潟の次に進捗状況が芳しくないのが石川県だった。
石川県は令制国の区分で言うと加賀国と能登国で構成されており、後者は能登半島の大半を占めている。
この能登半島が思った以上に広いことがネックになっていたのだ。
能登半島自体は、北から奥能登、中能登、口能登という区分で分けられているのだが、この奥能登地域が非常に遠い。
距離感を視覚化するため、下図に示した。
朱線は私の住んでいる一宮市から七尾市までの距離で、これが約230キロ余りだ。
なお、七尾市は上述の能登半島の分類では中能登にあたる。
そして、対する青線は七尾市から奥能登の東端部に近い珠洲市狼煙町までの距離を示している。
地図上では非常に短く見えるのだが、その距離はなんと約100キロもある。
これは朱線の半分弱にあたる距離だ。
七尾市までたどり着いたら、そこから更に今まで走った距離の半分近い距離を走行しなければ奥能登東部まで行くことは出来ないというわけである。
さらに言えば、そこから西進して輪島市へ向かい能登半島一周を企図した場合は、所要時間はこれよりも長くなる。
要するに行くだけでかなり時間がかかるので、宿泊を伴う移動をしないと日程的に厳しく、日帰りできたとしても勿体ないという認識もあって奥能登へ向かう機会を伺っていたのだ。
しかし、そんな心境に少し変化が生じた。
それは、7月に鹿児島県まで3泊4日かけて自走したことに起因するもので、「鹿児島県まで3泊4日で自走出来たのであれば、少し早く家を出ることにより日帰りで奥能登くらい一周して帰ってこられるのではないか」という実に狂った思考が頭をもたげたのだった。
先に結論を述べてしまうと、結局日帰りせずに一泊している。
もちろん宿泊予約などしていなかったが、これが意外と何とかなってしまったのだ。
実はこの成功体験も良くない面があり、後の失敗談へと繋がってしまうのだが、前置きはこの程度にして当日の記録を書き出していこう。
1日目(8月12日)
奥能登へ行くとなるとかなり時間がかかることは分かっていたので、自宅では朝食を取らずに早々に出発した。
午前5時半頃に自宅を出発し、東海北陸道長良川SAで朝食を兼ねて休憩を取った。
経路としては非常に簡単で、東海北陸道をひたすら北進して小矢部砺波JCTでそのまま能越道に接続するだけだ。
なお、能越道は七尾から田鶴浜までの間の区間が未開通のため、七尾ICで一旦一般道へ降ろされることになる。
能越県境パーキングエリア
能越道の小矢部砺波七尾間にあり、その名の通り能越すなわち石川県(能登国)と富山県(越中国)の県境に位置しているという珍しいPAだ。
施設の設備そのものについてはお手洗いと自販機程度しかないが、木製部材を多用するなどデザイン面ではオシャレな作りになっていた。
名前から施設内の境界線まで、とにかく県境であることを殊更強調してウリにしているパーキングエリアだった。
能越道は高速道路ではあるが、法律上は高速自動車国道ではなく国道470号の自動車専用道路扱い(いわゆる高規格幹線道路のB路線に当たる)として整備されている。
一部区間を除き全額が税金により建設されているため、無料で通行することが出来るのだ。
そのため、維持管理も道路公社やNEXCOではなく国土交通省が行っているのである。
別所岳サービスエリア
のと里山海道という高速道路にあり、お土産売り場なども充実している大きめのサービスエリアだ。
このサービスエリアの見どころは何と言っても展望台の存在で、七尾湾を眺めることが出来る立派な展望台が設置されている点だろう。
スカイデッキ「能登ゆめテラス」
展望台は別所岳スカイデッキ「能登ゆめテラス」と命名されている。
なお、入り口から展望スペースまでは意外と距離があるので、時間に余裕がないと散策するのは厳しいだろう。
ラウンドアバウト
このサービスエリアにはもう一つ珍しい見どころがある。
それは、駐車場がラウンドアバウト構造でつくられていることだ。
ラウンドアバウトとは日本語で環状交差点などと訳されるもので、円形の一方通行の交差点の事をいう。
交差点の特徴としては左折により進入及び退出をするように設計されている点で、事故や渋滞の原因となる右折を全て廃している点にある。
なお、アメリカや中国のように右側通行の国では、左折と右折が逆転する。
このパーキングエリアの面白いところはもう一つあり、Uターンをする事が出来るようになっている点だ。
対距離料金制の有料道路においては走行距離に応じて通行料金を徴収されるため、PAでのUターンを認めてしまうと走行距離に応じた適正な料金を徴収する事ができない。
そのため、そもそも構造上Uターンする事ができないように作られている。
しかし、通行料金の計算をする必要がない無料の道路においては走行距離に応じた通行料金について考慮する必要がなく、PAでUターンする事が出来る構造にしても何ら問題がないというわけだ。
このようなPAやSAは他の無料の高速道路にもあり、例としては紀勢自動車道の無料区間内に設置されている紀北PAが挙げられる。
また、有料道路のPAであってもUターン出来るように整備されている与島PAのような例もある。
与島PAは瀬戸内海の離島である与島に設けられており、PA自体が観光名所となっていることから、これを目的に来訪する観光客を見越したものだろう。
PA内には与島チェックゲートと呼ばれる検札所が設置されており、ここで通行券への処理もしくはETC機器との通信により経路を記録し、走行距離に応じた適正な通行料金を計算出来るような仕組みになっているのだ。
道の駅あなみず
本日最初の道の駅は、道の駅あなみずだ。
道の駅の中には鉄道駅に併設されていることがあるが、この道の駅あなみずもそうした鉄道駅併設型の一つであり、のと鉄道の穴水駅に併設されている。
なお、穴水駅はのと鉄道の終点であり、これより先に鉄道路線はない。
かつては珠洲や輪島まで鉄道で繋がっていたようだ。
道の駅のと里山空港
道の駅には鉄道駅が併設されているところもあると書いたが、ここはなんと空港と一体化した道の駅だ。
地方空港とはいえ、空港施設と一体化している道の駅というのは珍しい。
道の駅ではあるのだが、それよりも空港としての設備に目が引かれる。
そのためか、道の駅という印象は薄い。
展望デッキ
眼の前に広がる滑走路を見ると、ここが空港であることを強く実感する。
しかし、非常に便が少ないようで、飛行機が離発着する様子は一切観ることが出来なかった。
滑走路を一望することが出来る展望レストランもある。
しかし、先程の滑走路の閑古鳥が鳴くような有様を見るに、空港らしく航空機の離発着を観ながらランチを食べるのは難しいだろう。
フライトスケジュールを確認したところ、一日にたった2往復しかなかった。
利用客の数が気になったので調べてみたら、これでも搭乗率保証制度(※)による損失補填の補助金が支払われたことがない程度には利用客がいるようだ。
奥能登には意外と外国人観光客も見かけることから、そうしたインバウンド需要もあるのかもしれない。
石川県には北陸新幹線が開通したとは言え、金沢駅から当空港までは車で一時間半程度を要する距離だ。
対して羽田空港からのと里山空港までの所要時間はわずか一時間という短さである。
この事からも、羽田空港を利用して来日する外国人観光客をターゲットにしているのは間違いないだろう。
※一定の搭乗率を下回った場合に自治体から航空会社に対して損失補填がなされる制度のこと
道の駅桜峠
のと里山空港ICを降りると、そのまま珠洲道路と呼ばれる道路に沿って東進することになる。
この道路は奥能登地域の東部を東西に横切る形で通っており、最終的には珠洲市内の国道249号へと至る観光向けの道路だ。
この珠洲道路に面した道の駅は二箇所あり、一箇所は先程紹介した道の駅のと里山空港で、次に現れるのが道の駅桜峠だ。
道の駅桜峠は奥能登地域のちょうど中央に位置している。
到着した頃には正午くらいになっていたため、そろそろ昼食を取ることにした。
こういう道の駅めぐりでは昼食を抜いてしまいがちなので、タイミングが合った時くらいは取っておきたかったのだ。
まあ、より正確に言えば昼食を抜きたくて抜いているのではなく、飲食店を探しているうちに時間が過ぎてしまって結果的に食べ損ねてしまうだけなのだが。
道の駅としての規模は小さめだったが、店内には売店以外に飲食店があり賑わっていた。
私も店内の飲食スペースを利用したが、食べたいものが無かったため飲食店は利用せずに売店で購入した赤飯を食べることにした。
赤飯を選んだ理由はうるち米を用いていることで腹持ちがよいという実利と、それ以上に私の好物だったからだ。
右端にかき氷の旗を出した緑色のテントが見えるが、このテントで出店も営業していた。
赤飯だけではタンパク質が足りていないと感じたので、ここで唐揚げを購入して運転の合間に食べていた。
道の駅すずなり
珠洲市の中心部にあり、売店のほか電動自転車の貸出(レンタサイクル)も取り扱っていた。
どうやら珠洲市周辺はサイクリング目的での外国人観光客が多く訪れるそうで、この日も何組もの外国人の姿を見た。
電動自転車の貸出窓口で勤務していた従業員のおじさんが色々と教えてくれたのだが、どうやら外国人からすると珠洲市周辺はサイクリングに向いているらしい。
しかし、私からすれば炎天下でサイクリングをするという行為は修行以外の何物でもなく、そんな事をするために遠路はるばる高温多湿で酷暑の夏季に我が国へ来る外国人の心理は到底理解できなかった。
風を感じられる分徒歩よりはマシだろうが、カーエアコンに慣れきった私の体では夏のサイクリングに耐えられないだろう。
なお、外国人観光客の内訳としてはドイツ人やフランス人などの欧州系の人が多いそうで、先日も人形のような可愛らしいドイツ人の少女が来ていたらしい。
この道の駅すずなりは、かつて珠洲駅という鉄道駅があった場所に建てられているそうだ。
のと鉄道の穴水以東が廃線となったことは既に書いたが、その廃線となった区間である能登線の駅の一つが珠洲駅だった。
敷地内には駅のホームがそのまま残されており、ここにある道の駅のルーツは鉄道駅であることを主張しているかのようだった。
ノスタルジックな印象を受ける古びた駅名表示板をはじめ、ホームだけでも取り壊さずに保存したのは観光面でも英断だったと言えるだろう。
粟津海岸
道の駅すずなりを出て東進を続け、ついに海岸沿いへ出た。
粟津海岸というらしいが、海水浴場があるわけでもなく人影はない。
とりあえず風景がきれいだったので写真を撮りつつ休憩し、タブレットでこの先の道を確認していた。
だいぶ文量が多くなってきたので、初日はここまで。
続きは次の記事で書くとしよう。