03 言葉の解体3 破壊の女神

「面白い人は最初に言葉がない」

「手を動かしていくうちにだんだんと見えてくる。それまでは感覚的に作るしかない。一旦やりきった後に、客観的に見ることで言葉が生まれるのだ」

「ただ、それを人に伝えるときは、再び言葉を忘れた方がいい」

これは前々回紹介した青木淳の発言である。

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とある卒制の話。

僕はビルの隙間や高架下、暗渠や古墳が好きだ。いわゆる都市の裏側、正直よくある発想である。「しかし卒制だし、好きなことをやるのが一番だよな。」

ダンチ職人で味をしめていた僕は、例の如くキャッチーなネーミングを夕方の駅のベンチで考えていた…

(この時彼が悪の組織に契約をし、ダークサイトに落ちていくことを誰が予想できただろうか。ちなみに僕は、episode1がお気に入り。)

そうだ!余白不動産なんてどうだ。

雲を見ていてそう思った。フワフワそう思った。

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使われていない都市の裏側を活用しよう。そういえば、タイムスの上に美容院を作ったり、京町屋の上にコンテナオフィス、高架下の商店街プロジェクト、様々な事例を思い出した。余白不動産は、これらを一言でいえるぞ。

この言葉のおかげで案が飛躍的に固まった。
余白

余白をたくさん採集した。やっぱり採集は楽しい。

面白かった例を少しおすそわけ
幼稚園

写真は四方をNTTや銀行の高層ビルに囲まれた幼稚園である。そんな環境で子ども達がのびのびと成長できようか。と思うだろう。だが、この幼稚園の入り口に立つとその思考はことごとく砕かれる。なんて楽しそうな声!元気よく走り回る爽快な足音!綺麗に飾られた園児たちの絵画!

最近住宅街にたつ幼稚園が社会問題になっている。わーキャーうるさいと近隣住民がクレームを入れるそうだ。そんな事ならいっそ、完璧防音ビルの隙間に建てれば良い。人間をなめてはいけない。どんなヘンピな場所でも、そこに豊かな環境を発見し使いこなす能力がある。

他の余白リサーチ↓
https://nibun-no-san.wixsite.com/real-of-urbanblanks

余白不動産の面白さに気づいてしまった僕は、この言葉にガンジガラメになる。言葉が強すぎるため、他の言語を受け付けない案になったのだ。日に日に首がしまっていく感覚を隠しながら、大砲を打ち続けた。

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そして講評会当日、何か一歩足りないことを僕は明確に自覚することになる。

ダンチ職人と同じだ…設計まで辿り着けなかった。ここでいう設計は、図面や模型ではない。なんていうんだろう。真の建築の面白さに触れれなかったこと?

自分の全く知らない未知の領域へ到達する感覚の欠如。「なんだか分からないけど面白そう」だとか、「先行き不明。なんの役に立つか分からない」とか、右往左往する中で建築は見つかるのだと思う。否、見つからなくてもいい。見つからない方が面白い。

それをいつか見返した時に、言葉が生まれ、批評する。その位ラフなスタンスじゃないと、固定概念にやられてしまう。

そしてまた、言葉を忘れ、考える。

2度と同じ間違えを犯さないように頭を壁に打ちつけた。

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しかしこの後、僕を救う破壊の女神が現れるのだ。ツいてる。学内の発表後、2年生の時教えてもらった先生の事務所へエスキスにいく。そこで案は180度転換。NAF卒制展まであと一週間。新たな模型を後輩と作る羽目になる。楽しくなってきたぞ笑。先生と後輩に感謝。

言葉の解体 続




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