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07 設計ノート3 全てがラビリンス

建築の授業は、与えられた敷地で行う。本当にそれでいいのか。そう考え始めたのはこの課題からだ。

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敷地は、愛知県の有松。歴史的な町家が並ぶ町だ。ここにコミュニティセンターを建てろという課題だった。

さて、何をとっかかりに設計するか。伝建築を○○にして…では、勿論ナンセンス。あと有松絞りという伝統があったな。今考えれば、それによって生まれる産業ネットワークを考えるだろうが、当時にそんな脳味噌はない。

ひとまず、コミュニティセンターというプログラムから攻めるか。

コロナ後に当時の提案をみると、僕らって能天気だなと思えてしまう。近代建築で生まれた、いわゆる『コミュニティ』という言葉に限界を感じ始めていたが、見事、コロナが終止符を打ってくれた。木っ端微塵。

実はその当時から、ずっと『コミュニティ』に対しての懐疑的な思考があった。本当にそんな『コミュニティ』というのが計画して発生するのか。押し売りではないか。そう思っていた。

じゃあ、それをコンセプトにしよう。

しかし、形が思いつかない…

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エスキスの帰り、配管って美しいな。合理的だな。とビルの側面を電車から眺めていた。これ使えないかなあ。

家に着くと、さっそくスタディを始めた。

要求プログラムをざっくり美術館、市民館、図書館の3つに切り分け、必要容積を算出した。一旦、それを箱にする。これでは従来のボックス建築だ。そこで、3m幅の細長〜いチューブ状になおす。そうすることで、各プログラムの接触面積が増える。つまり関わりのない人と人、モノとモノが出会うという予測不可能性が付加されたことになる。

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これをガシガシ、スタディしていく。そこはセンスでやった。一応、曲がる、旋回、くねる、降りる等々があり、活動の質や種類が少し変化する事を想定した。

おお、あの配管みたいになってきたぞ。


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構成はシンプルであるが複雑な空間ができた。そして、この3本のチューブが絡まる空間を『ラビリンス』と名付けた。

これを提出した。

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講評会当日

コンセプトを説明していく。

「人々が迷いながら施設を使う事で、本来起こるはずのなかった化学反応が起こr…

遮って先生はいう、

「いや、そんな大袈裟なコミュニティじゃなくていいんだよ。むしろ、たまに目が合うぐらいの感じがいい。そこの塩梅を調節する、それが建築家だよ」

なるほどな。コミュニティの解答になるか分からないけど、少し何かが見えた。

建築家って凄いな。難しいな。

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また講評会後の飲み会で、403のH先生とも話した。

「この建築はここに建てるべきじゃないよ」

え?

「砂漠の方があってるよね〜。君も模型の土台、コルクで作ってるじゃない?本当は気づいていたんじゃないの」

H先生は続ける。

「エストニアって知ってる?田根剛の。彼は、コンペで指定されていた敷地とは違う場所に設計したの。戦時中にソ連軍が使っていた滑走路へ変更して、見事一等をとった。批判殺到だったけど、建築家はそうじゃないとね」

なるほどな。課題文は文字通りに読んじゃいけないんだ。

建築家って変な職業だな。

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ここから僕は、敷地を変える職人になった。

(影響受けやすいにも程がある。笑)

常勤の先生からすると、平穏な教育指導を脅かす行為である。「ルールは守ろうね」というだろう。しかし、非常勤の先生は「いやいや、ルールは破るもの」と言うに違いない。私はどうしたらいいんだ。まあ、決まっているが。(その後、どちらからも言われた。)

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最後に、

この模型を見て「勇気が出ました」というコメントを貰った。映画でも小説でもない、建築を見て勇気がでる。最高に素敵な言葉をもらえて、嬉しかった。

そして、僕にトコトンとんがる理由を与えてしまった先生たちには感謝。これからもその精神を貫きます。ガンバラネバ笑

春は、意外と風がつよいなあ。汗

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補足

素材を使うことが怖い、そう言う人がいると聞いた。だから、白模型しか作ったことないと。勇気を出して使っていこう!だって、逆に使わないという意味もないから。しかも、そこの土地にあったものを使えば、愛着が生まれ、一部が壊れてもすぐに地元から材料を調達できる。そんなエコで合理的なことはないだろう!

また、素材の有効性は違う説明ができる。この建築は迷路的な空間になっていて、どこにいるか認識しにくい。ケヴィン・リンチの『都市のイメージ』でも「街の全体像が把握できないほど、人にストレスを与えるものはない」と言っていた。この建築も、正直迷子になる可能性がある。だから、そう言う時は、リンチでいうDistricts、地域独自のアイデンティティを使えばよい。今回の場合、それは素材である。

美術館、市民館、図書館をそれぞれコールテン鋼、木、コンクリートパネルとわけた。だから何となく素材で、どこにいるか分かる。それを外観にも適用し、意匠に変換したのだ。

素材は素晴らしいね。

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あ、あと、結果的に敷地を変えたんです。田園に。ヘルツウォーク&ドムーロンのドミナスワイナリーかっこいいなとか思いながら。https://www.flickr.com/photos/ximo_michavila/sets/72157632572044638/

一応載せておくので笑いながら見ていただけると、僕も嬉しいっす。

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以上。

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