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06 設計ノート2 計画できないもの

これは人生で2回目の設計。
計画できないものを計画しようとした話。

この課題をやっていた時が、一番トンガっていた。口を開けば、「カオスを作る」しか言っていない。先生たちには、「そんなモノはできない」と言われながら。

課題は学外スタジオ。敷地は大学近くのデルタ地帯。敷地の形状以外に、面白いものはない。そこで見えざる構造に頼ろうと考えた。

地面の下を通過する鉄道、住宅街に迫る山、川によって変形される街区。どれも敷地からは見えない。でも、これらは確実に敷地の3辺を構成していた。1つづつ説明していこう。

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1辺目。地下鉄は、借地権や騒音の問題で、住宅街の下を通したくない。だから、基本は道路に沿って計画される。銀座線とかまさにだよね。

でも、この地下鉄は、専用の街区になっている。

地上に顔は出さないけど、確実に影響を与えている。そこに立っている建物は、アパートや飲食店、ビデオショップなど。あるいは空き地。これはなんだか面白いと思った。

ちなみに、僕の通っていた駅へ降りるエレベータが敷地内にある。

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2辺目。この地域一帯はスプロール現象によって、ごちゃごちゃした街区になっている。その1つに、山が迫りくる住宅地があった。山の曖昧な輪郭に沿って道が形成され、整頓された街区に進入している。

山の方を歩いていると、高級住宅や洋風の団地があった。それに対して、平地側の街区には、学生アパートや長屋、建売がみっちり建っていた。その境界には、病院がある。これもまた興味深い。

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3辺目。ここもスプロールでできた地帯であった。でも、川に影響されている。山よりは曲率が低いため、そこまで見た目に変化はない。また、山側の街区に比べて、画面内での角度が水平に近くなった。

この地域には、学生や近所のオジババのための飲食店が多い。僕もよくお世話になったものだ。安くて量が多い定食屋に、雰囲気のいい個人の焼肉屋、トリキにラーメン、致死量を超えるチャーハンの中華料理屋…

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以上をまとめると、こうだ。

敷地は、3つの要素の結節点にあることが分かる。(実は、暗渠が横を流れていたが、課題中は気づかなかった)

さあ、ここまでがリサーチ。いざ、コンセプトへ…

いや、もはや、これがコンセプト?

各要素から、3者3様の人やモノがくる。これこそ、この敷地の最大のポイントではないか。彼らを敷地内に引き込ませる。街と連続させようと考えたのだ。

そこで、それぞれから生まれるグリッドを敷地内へ取り込んだ。それに合わせてT字の壁を建てることにした。

結果、58枚の壁を管理することになった。ひぃひぃいいながら壁を建て続ける。AIではない僕は、ついに脳がエラーを起こす。これは建築にも影響を及ぼす。

しかし、これがよかった。

3つのグリッドが噛み合うことで生まれる不具合。厳格な幾何学システムが破綻する場所。そこにこそ、豊かな空間が生まれるのではないか。そう思った。

建築はシンプルがいいという。この建築は、その点で非常に明快だ。

でも、なんとも形容し難い変な建築が生まれた。
これが、カオスだ。

Δ

講評会当日。

「カオスができたぞ!」

「いや、だからそれは計画できないんだよ」

「え…。」

さらに援護射撃が来る。

「養老天変反転地みたいだねえ」

おいおい、全く嬉しくないぞ。

「ホームレスが住み着きそうだねえ」

そうかもしれないが、それで何が悪いんだ!言わせとけ!

こんな感じで先生たちと話が噛み合わなかった。モヤモヤと焦燥感。アドバイスというよりは理解ができないと言われている。

そんな中、担当教員のY先生は、この建築は『都市のダイナミズム』を捉えたものである。と言ってくれた。難しい言葉でよく分からない。けど、凄い嬉しかった。

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p.s.このブログを書くにあたって

『都市のダイナミズム』

やっと今、それを文章として表現できるようになった。先生の発した言葉に何とか追いつくように、ただそれだけをやってきた。

人は自分が発した言葉はよく覚えていない。しかし、言われた側は凄い影響を受ける。いい言葉にしろ、悪い言葉にしろ、とても受ける。

僕は影響を受けやすい。落ち込んだり、怒ったり、喜んだり。それを糧にして生きてる。

自分の芯があれば、他人は関係ないという。そんな天才はいるのだろうか?みんな生きていたら何かしらに影響を受ける。影響を受ける事は劣っていることではないと思う。

人と人との間に僕は自分の芯を見出す。この方法は、精神的に辛い面もあるけど、僕の性格上抜け出せない。人と比較することで、自分の輪郭が見える。

幸せを比較するから不幸になるのだ。とTVは言う。ほんとその通り。

じゃあ、気楽に考えろ?自分だけを考えろ?ムリムリ。出来るもんなら、もうやってる。


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