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11 子安浜オデッセイ inspire

今日は、僕が1位を取れないワケを説明していこう。

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才能があるのに売れないミュージシャンがいる。よく聞く話だし、それで悩んでいる人も多いはず。

周りはこう言う。「センスも、オリジナリティもあるのにね」
でも、芽が出ない。彼は自信をなくし、自分を疑う。

なんでだろう。ずっと考えていた。その理由を探る必要がある。

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好きなバンドがいる。彼らが僕にとっての、始めてのライブだった。名古屋の小さなカフェ&バーが会場。丸テーブルで飲み食いしながら聴ける。内壁は煉瓦。柱の陰に座る。安心感からスコッチを頼んだ。ステージにボーカルの女性が登った。いつも明るい。常に前を向いている。でも、どこかに悲しさを含む。彼女はそれを受け入れている。全員がそう思っているかは知らないが、僕には確実に伝わっていた。彼女の曲は、いつも世の中の真相をついている。理不尽な世界に対して、歯向かう。それでも解消されないから、ふたりの今ある瞬間を、全身で楽しむのだ。

ポップなメロディの中に、哲学と論理の混じった美しい言葉がある。

彼女は売れない。売れなくていいかもしれない。彼女の言ってることは、万人には分かりゃしない。それを体験した人じゃないと、知らない言葉なのだから。

彼女のは、究極の共感である。ただ、そばにいてくれる。それだけでいいのだ。僕らは何度それに助けられたことか。

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これまた僕の好きな建築家がいる。彼は、世界一のディテールを持っている。本当に世界一なのだ。悪いが、ミースもルイスカーンも勝てない。だって、家の全ての金具、ドアの蝶番までデザインされている。既製品なぞ絶対使わない。そこにかける熱量と意識が明らかに違う。これこそ正真正銘の「細部に神が宿る」だ。彼の作品が、小学校の通学路にあったことは運命なのかもしれない。

ある時、彼は自分にコンペが向かないと判断した。

彼には自分の建築哲学と世界観がある。それは最低限こなさないといけないことで、コンセプトなどは邪念または誤魔化しにすぎないのだ。

彼の鋭い美的感覚は、一部の人にしか分からない。それでも彼は良いと言うだろう。その姿勢に、僕は感動せざるをえなかった。

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彼らは、僕にとっての永遠の先生だし、そこに優劣という概念は存在しない。だから、比較することもできない。以下の文章は、僕の単なる戯言である。

とある日、「インスパイア」という言葉が脳裏をよぎった。何の脈絡もない。突然の飛躍。

「僕は、人にインスパイアさせる作品を作れていない」そう思った。

ほかの誰にも作れないものを作る。そこだけに注力していてはダメなんだ。自分という存在がもっと開放的で、解釈の幅がないといけないんだ。

今までの疑念が腑に落ちた。

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少年よ、

sanaaを見よ。

真似したくなるではないか。森山邸から新しい発想をいくつも享受した。

少年よ、

ルイスカーン を見よ。

彼の言葉は、永遠に続いている。正直何を言っているか分からない。でも、僕らは必死でそれを理解しようとする。考える。そして誤読する。このズレに、彼は未来を見た。

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これはダンジョンだ。
パワーアップすることを僕らの細胞は希求している。

僕らは繋がっている。
互いに考えることを欲している。

「人にインスパイアを与える。そんな建築を作らないと、いけない」

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