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a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑪

二人は屋敷に入ると壁伝いに進み、台所と思われる部屋の扉を開け室内に入ると押し殺した悲鳴があがった。

「誰かいるの?」

「助けてください。どうか殺さないで」

「心配しないで、大丈夫。ここに灯りはない?」

デュベルが尋ねるとロウソクが点り、おびえてうずくまる召使たちが見えた。

安心して泣きだした召使たちは、召使仲間でおかしくなったものが屋敷の灯りを消して回っているうちに何者かが入り込み、それらと警備の者との間に戦闘が始まったこと。
恐ろしさのあまり、戦闘の音が遠ざかって行っても召使たちは部屋から出られず、ここに隠れていたことを二人に伝えた。

「ウィルバー卿はどこに?」

「わ、わかりません。
もう私室に行かれていたはずですが、ここにいるもので姿を見た者はおりませんで・・・」

「そうか。怖ければカギをかけてここに隠れていなさい。
ああ、ありがとう」

サイラスが召使からランタンを受け取った時、屋敷内のどこからか大きな物音がして、続いて階段を上がっていく足音が聞こえた。
 
二人は再び震え上がった召使たちを隠れさせ玄関ホールへ戻った。

「何の物音だろう?・・・む、これは、酷いな」

ランタンに照らされた室内の踏み荒らされた床にはあちこち血だまりがあり、倒れている兵の姿と、それに混じって人ではないものの姿が見えた。

「これは、インプだ。魔物は踊り子だけじゃなかったのか・・・。
サキュバスにインプ、魔法を使う相手か。戦い方を知らないと倒すのが難しい・・・厄介だな」

「サー・ユージーンは大丈夫かしら」

「一体ずつなら一人でも倒せるはずだ。でも、相手が複数だったら・・・。
さっき足音がしたようだけど、一人で上に行ってしまったんだろうか?」

彼らはあちこちに残る戦闘の跡を避けながら上の階へと向かったが、そこは更にひどい様子だった。

倒れている者も増え、彼らが持っていたであろう松明やランタンが石の床で燻っている。

中に息のあるものもいて、彼らは手当てをしている二人に卿の私室の場所と、残っていた兵たちが卿の私室から現れた女の魔物を追って屋敷の奥へ向かったことを教えてくれた。

「あの魔物を彼らが倒せるかわからない。
どうか、彼らを、仲間たちを助けてくれ・・・」

彼らは苦しい息の下、口々に二人に頼んだ。

「分かった。
彼らを追うから、君たちはここにいろ。心配するな」

 
 
~⑫へ続く

 
お読みいただきありがとうございます。
 
 
物語の解説を少し。
 
ブリタニアにはいわゆるエネルギー源としての電気はありません。
(とはいえ、ダンジョンの中や世界のあちこちに電気を動力としているように見える物も多々見受けられるのですがね・・・)
 
ですので、夜が来れば暗くなり、ダンジョンの中は真っ暗です。
冒険者たちは暗いところではロウソク、松明、ランタンなどを使って行動をすることになります。
 
街の中にはお店からの灯りや街灯もありますのでそれなりに明るいと思いますが、電気の灯りに慣れた地球の私たちから見るとかなり暗く、街の外では不安を感じるほどになってしまうことでしょうね。
 
それでもブリタニアには魔術師がおりますので、彼らから明るく見えるようになる魔法(night sight)を掛けてもらうことにより一定期間は灯りがなくても行動することができるようになります。

また、ブリタニアにはエルフたちがいますが、彼らは生まれつき暗闇を見通すことができる種族なので夜でもダンジョンの中でも不自由なく行動することができるんですよ。

 とても便利ですね。

ですが、暗さを感じないということは部屋の中に置いたランタンや、壁の松明が照らし出す味わいのあるライティングを楽しむことができなくなりますので、いつも明るいのは便利ではありますが、少し味気なく感じるのではないでしょうか。
 
皆さんはどう思いますか?
 
 


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