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Q9、あなたにとって「就職する」とはどのような意味を持っていますか?800字

職に就く。自らの人生、価値観、欲望に今一度立ち返り、それでいいのかと問い続ける。そして何千何万という会社の中から選び出した本当につきたい仕事、企業へ本気の熱意と想いをESや面接で伝える。そこで確かな手ごたえを感じ、結果通知を今か今かと待ち続け、その末に来た一通のメール、そこに書かれたお決まりの文言に絶望する。立ち返り、問い続け、やっと見つけた本気を悉く断られ続けるという精神的成長を促す痛みの伴う通過儀礼。自分がいかに必死に懸命に就活に励もうとも、それはテストのように確実に成績が上がるようなことはなく、すべては他者の手にゆだねられている。自分が一次面接で落ちESも通らないことが多い中で、周りの人間は次々の内定を取っていき、その数で競い合う。その枠があればという怨嗟の声を押し殺しおめでとうと祝う内側で、確実に自尊心は摩耗していく。本気で自分の魅力を売り込む。本心を伝える。こんなことをやってきた、こんな風に成長したい。そうして自信があるように見せる反面、削れた自尊心は靴でも舐めるからと、へりくだりすがるような想いをのぞかせる。始めは一番の動機で一番大切だったはずのこだわり、立ち返り問い続けたことで見えてきた本当の自分がいつしか足かせになる。自分が本当にやりたいこと、この仕事なら自分の人生は幸せに生きられるんじゃないか、そんな期待を、輝かしい未来を思い描いていたすべてがゆっくりゆっくり、喉を締め付けていくのだ。やがて、恐怖に負け、手当たり次第にESを出し、それでもどうにもならない。透けて見えるのからだ。口では御社に入りたいといいつつも本心ではただ恐怖に駆られているだけという魂の底が。そうして保身に走って失敗していれば、本命のやりたい仕事の就活がおろそかになり、どちらもままならなくなる。最後には拾ってくれたブラック企業に絶対の精神的忠誠を誓い、勝手な恩に縛られ続ける。これが私の就職。(800)


落選。

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