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夢日記|改築

夢では、よく知る施設が拡張されていたり知らない部屋ができていたりすることがよくある。「通っていた学校」という印象は確実なのに、高校と中学が混ざっている、など。自宅も例外ではない。


自宅が拡張されていた。まず、明るい玄関を出てすぐの道路が色の幅広い石畳になっている。外壁にどうやら外階段が設置されたらしく、全体的に白いカラーリングに変わり、上階に窓の大きい植物園のような場所とグランドピアノを置く部屋があった。同居する両親に訳を聞けば、母親の意向だと言う。母親はそこまで熱心に植物に興味関心があるわけでもなく、音楽もまた然りだ。

場面はやや飛ぶが、明らかに同じ家。今度は自室が改造されていた。というか、改悪といって良い代物で、入口が人ひとりしか通れないような廊下になっていて、突き当たりのハシゴを降りて、そこに寝るスペースだけがあるような、入り組んだイメージだった。削られた部分、あるいはさらに面積的に拡張されている部分に関しては、なにか複雑な機構になっていたような気がする(「クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険」や「少女革命ウテナ」の建造物のような「画質」と言えば良いだろうか)。

多分同時くらいに、母親と、それから実在しないきょうだいの身体の一部が人工的な質感になっていた。母親にピアノの部屋たちのこと、自室のことを問いただしたが、上の空の返事しかしなかった。父親にも、その母親のおかしさとともに同じ話題を持ちかけてみるも、まともに相手にはされなかった。

夢を見ていた、と思った。家は元のサイズに戻り、構造もリセットされたように思う。家族四人(うち、実在しないきょうだいをひとり含む)で玄関を飛び出し、私以外が(とくに、実在しないきょうだいが)石畳の大通りを見て、夢かと思っていたがこの大通りはそもそも最初からあったものだね! という旨のことを言った。私はその瞬間にはさほど違和感を覚えなかったが、意識はどこか中空に浮いていて、家族に一体感を感じることは無かった。なぜなら、家族の見た目は全員、あるビデオゲームのキャラクターになっていたからだ。強いて言えばゴリラだった。

家の雰囲気はどこか暗い。元通りになったはずの構造はしかしまた複雑になったころのように戻っていて、父親も機械のような質感を帯びてきた。食卓を囲んでも、家族は下手な家族ドラマのようなテンプレート的な家族団欒を演じているような印象を受け、それがかなり下手くそに感じられたため、不安と不快を同時に受け取った。彼らが元通りにならないだろうかと思っていたが、実在しないきょうだいのことをどうしたいかまでは、よく考えていなかったように思う。

次の日、家族の質感は全て人間のようになった。会話も楽しく、不自然には感じられなかった。家のことももう気になるようなことはなく、食卓を囲んで楽しく過ごした。


書いていて目眩がしてきたが、夢の内容はこんな支離滅裂なほうが普通だろう。前回の狐の夢は大分ハッキリとしていて、映画を見るような映像が流れていたが、今回のものは映像というよりも「ある概念がそこにあった」という抽象的な記憶あるいは断片的な静止画が元となって、今それらを映像に起こし、それをさらに文章に起こすような作業を伴っていて、実際に見た夢の解像度としては低いか、過度に高くなっているはずだ。

覚醒後の感想としては、やはり家族の気持ち悪い変化が現実のものではないということを確認したい気持ちが先行した。そのあと、最後に食卓を並べた場面では私の視点では普通に見えていたはずなのに、またどこか一歩引いて見ている自分を感じ、むしろ私自身が最後に機械化(?)されることで、彼らや家の不自然さを感じられなくなっている状態、というオチなのではないか、と思った。なお、家族の容姿が変化したキャラクターとは、Overwatchシリーズの人語を扱うゴリラ「ウィンストン」である。

他の人がどうなのかはわからないが、私は映像的な記憶として夢が残ることが多い。出来事の記憶も多い。こういうことがあった、というまとめられた記憶を紐解く方式として、断片的な映像を繋ぐことで思い出しているように感じられる。一方、音声的な情報や嗅覚情報が、少なくとも覚醒後に思い出されることは稀だ。

それから、全体的な夢の雰囲気は基本的に薄暗い。ホテルの間接照明のような、暖かみのある色の薄暗さのこともあれば、ホーンテッドマンションのような、灰色の闇という感じもあって、とにかくはっきり愉快な雰囲気のものはほぼない。今回も自宅にもやもやとした変化が起こるものだった。

文字に起こしてしまうと割合エピソードとして成り立たせる力が働いて、どの人間の夢もある程度その支離滅裂さと媒体故に同じように見えるが、実際に「語る」以前の素材の情報だけ取り出してみようとすると、案外人によって違うのではないだろうか。音声や匂い、あるいは味や触覚を強く思い出される夢、というものを見たことがあれば、教えていただきたい。

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