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人生が変わる瞬間は、意外なところからやってくる

※現在行われているWEST.のドームツアーのネタバレを含みます。ご注意くださいませ。

6月某日、仕事を辞めた。通信の大学に通っているのだが、今年の春から、授業の関係で仕事と学業との両立が難しくなった。会社に対して少し不満はあったけど、上司にも恵まれて、同期とも仲が良く、残業もない。働きやすく、いい会社だった。
でも、私は悩んだ末に叶うかわからない夢をとったのだ。何度も諦めた夢をもう諦めたくなかった。
果たしてこれがあっていたのだろうか、ということは考えないようにしていた。考えたところで、もう仕事を辞めた事実も、勉強を頑張らないといけない現実も変わらなかったからだ。

仕事を辞める少し前、仲のいい友人からライブに誘われた。今年10周年を迎えた『WEST.』のドームライブだった。関西のデビュー組でライブに行ったことがないのは彼らだけだったこと、誘ってくれた本人に関西のオタクは楽しいぞ~と伝えたのは私だったこと、そして、少し前に発売されたシングルの『Beautiful』が本当に好きで、生で見たい!と思ったこと。これらから、「ぜひお供させてくれ!」と参戦することになった。

当日、お昼少しすぎにドーム前で友人と合流。サイゼリアでご飯を食べ、グッズを買う友人を見届け、あべのハルカスへ移動。沢山のファンが並ぶ中、堂々と広告塔を担う彼らに凄いなぁと感心しながら友人の写真撮影を楽しく手伝った。

入場前に3~4年前から仲のいい桐山担のフォロワーに挨拶。「WEST.はすごいぞ~」という言葉に胸を躍らせ、いざ入場。スタンド前列三塁側。数か月前に双眼鏡を失くしていたので、見やすい席で安心した。

始まるとどこか懐かしい感じのする7人組に、なぜか安心した。ずっと楽しくて、キラキラしていて、ワクワクが止まらなかった。やっぱりドームライブはこうでなきゃ。SUPER EIGHTのドームライブで育ち、過去一楽しかったライブを聞かれたら迷うことなく「18祭」のスタジアム公演をあげる程、大きい会場でのライブが好きな私は、演出や、セトリにワクワクしながらライブを楽しんでいた。
そして、楽しみにしていたBeautifulはとんでもなく良かった。藤井流星さんが画面に映るたびにそのご尊顔に息をのんだし、キラキラしたイントロが流れた瞬間に、チケ代の元はもう取れたと本気で思った。やっぱりアイドルって最高だとしみじみした。たくさんペンライトを振って、知ってる曲は踊って、ずっとずっと楽しいライブだった。

その時は突然訪れた。ライブも終盤に差し掛かったころ。
その曲、その歌詞、そのフレーズの前後のことはあまり覚えていない。ただ歌詞に「なぜ同じ様に生きれないの」という文字を見た瞬間に、世界が止まったように感じた。頭が真っ白になった。そして自分の中にせき止めていたなにかが壊れて、涙として流れていった。
歌詞が表示されるモニターから目を離せない私がいた。

私は今年24歳。学生時代の友達は結婚していたり、子供がいたりする。そんな中、まだ大学を卒業する目処は立っていない。定職にもついていない。夢が叶う保証もない。恋人なんて考えてる余裕はない。人と違う人生を生きている自覚も十分にある。

未来が怖くてたまらない夜なんて、数えたらキリがない。

今思えば、どこか縋るような気持ちで見ていたんだと思う。

『間違っちゃいないよな』

その言葉は、私が最初の仕事を辞めたときも、通信の大学で夢をもう一度追いかけると決めたときも、授業を受けるたびに何もかもが足らなくて笑いながら「悔しい~!」といっていたときも、「学業専念のために実家に帰ることになりました。」と、あの日上司に告げたときも、考えないようにしていた言葉で。

他の歌詞もひとつひとつが刺さって刺さって抜けなかった。
他の人の経験値が羨ましくて、思ってない時でも何かをごまかすように言ってしまうようになっている『いいな』という口癖とか、毎朝気にしないように薄目で見ている朝の占いとか。
歌詞が流れるたびに頭に浮かんでは消えていく日常を思い出してしまって、もうどうしようもなかった。

涙もろい方だと思うし、感受性は豊かな方だと自負している。ライブで泣かないことの方が少ないし。実際エイトのライブなんてGE8EST以降のライブで泣かなかったことなんてほぼない。
でも初めてきいた曲であんなにも泣くなんて経験は初めてだった。嗚咽して立てなくなった。座り込んだまま彼らの歌に耳を傾けていた。『間違ってもいい』『どんな自分だっていいんだ』と聞こえたとき、そんなこと知ってたはずなのに、初めてそのことに気が付いた。

その曲に続く、印象的なぐらい『大丈夫』を届けてくれる歌。暗い道でどこに向かって走っているかもわからない中で見えた唯一の光みたいにパッとモニターに映る7人は、ヒーローだった。また泣いた。一度流れた涙を止めることがこんなにも難しいなんて思ってもいなかった。気合を入れていたメイクはもうボロボロだったけど、気にしている暇はなかった。そんなことよりもただただこの歌に向き合いたかった。
『えいえいおー』がこんなにも自分を鼓舞してくれる言葉だったなんて思ってもいなかった。

続く歌。

『諦めたい夢なんてないよな』

ない。ないよ。諦めたい夢なんて。そうじゃん。ないんだよ。ないから今頑張ってんじゃん。

ほっぺたをバチン、と両手で挟まれた時のような、目が醒める感覚がした。何度打ちのめされても、何度倒れそうになっても、何度周りと自分を比べて心が負けそうになっても、『諦めたい夢なんてない』んだから。私は「何度もあきらめた夢をもう諦めたくなかった」んだから。

心にもう一度、闘争心とか、負けず嫌いとか、がむしゃらに頑張る気持ちとか、そういう『熱い何か』が湧き上がってきた。

人生のギアが一個上がった音がした。たぶん自分にしか聞こえてないけど、今はそれでいいと思っている。

ライブ終わり、その三曲の歌詞を改めて見た。三曲目の『ハート』以外の二曲は、重岡大毅さんの作詞作曲と知った。びっくりした。彼にもこんな感情があるのか。丸山隆平さんと雰囲気が少し似ていて、きっと繊細な人なんだろうな、ということは何となく察していたけど、こんな真っすぐに歌詞が伝わる歌が書ける人なのか、こんなに一般人の私が共感できる歌詞をかくことができるのか、とだいぶ驚いた。

でも、彼がつくった曲を、彼らが歌ったからこそ刺さるものがあったんだろうとも思った。きっとこのアイドル人生の中での経験値から生まれた、まっすぐな歌声だったから、あの歌詞達が私に刺さったのだろう。

あの日以降、生活がガラッと変わった。できることは全部やろう、毎日何か一つでも学ぼう、苦しくてもあと少しだけ頑張ろうと、自分を鼓舞している。そして、どうせ自分なんか…という消極的な姿勢から、全てにおいて積極的に動くようになった。
あの日、彼らの歌に出会わなかったら、何も変わらない後回しが得意な私が継続されていただろう。

いつだって胸にはあの日『超一緒に押してやる』と背中を叩いてくれた7人がいるから、もう何も怖くない。どこまでだって行ける気がする。
大丈夫、あの日の不安は彼らが打ち消してくれた。これでいつでも戦える。

最後に絶対笑ってやるからなーーー!!!!!!!

今日も自分を鼓舞して、まだ終わりの見えない学生生活を進めている。

人生が変わる瞬間は、意外なところからやってきた。終