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千年寝た勇者と千年後の旅物語Ⅹ

「凄いな……」
「楽しそうだね、クロ」

翌日。

俺達はモノレールに乗った。

つい、俺は身を乗り出して流れる景色を見る。

「ああ、こんなに凄いんだな」
「…………クロ」

千年も経てば……こんなに凄いものが出来るんだな。

「……なぁ、ツバキ」
「……ん?」
「お前から見た王都はどんな感じだ」
「……何故俺に?」
「……いや、気にすんな」

シロトを出てからずっと考えていた。

俺はこの世界を……

「あ、アレが王都だよね!」
「うむ」
「!」

シロ達の言葉に視線を上げると、城を中心にした街が見える。

「そういえばクロ」
「ん?」
「王都で何をするの?確認する事があるんだっけ?」「……ああ、ちょっとな」

もし俺の予想が合っているなら……王都には奴等が居る筈だ。

軈て、モノレールは王都へと着いた。

「…………」

此処がこの時代の王都。

「……クロ、その……」
「ツバキ。一日だけ時間をくれ」
「え?」
「一日だけ……この王都を見てみたい。後はお前“達”がやりやすい所に案内してくれりゃいい」
「……何もかも、見通して……」
「クロ!これからどこに行くの?」
「先ずは色々と見て回るぞ」
「あ……」

ツバキに背を向け、俺は歩き出す。

どうやら王都辺りは魔獣被害が多かったが、対抗策を見付けた騎士団のお陰で大分抑えられたらしい。

その為、王都民に話を聞けば、騎士団に感謝の言葉が多く聞かれた。

「『ハートランプ』に来た時は理不尽な人達って思ってたけど……」
「実はそうじゃないのかな」
「騎士団本部ってどこにあるの?」
「……城の敷地内にあるのだ」
「「「え」」」
「今は自治団だが、元は歴史古い組織なのだ」

そりゃ、千年前のものだしな。

それから王都を巡る。

王都特有の店や公園を巡り、笑う彼等を見詰めた。

……巻き込んで悪いな。

「ツバキ、もういい」
「!だが、一日は……」
「いいんだ……彼奴等は俺が巻き込んだ。容赦してやってくれ」
「……必ずや」
「ありがとな」

そして、俺達はツバキの案内で路地裏へと入る。

「ツバキ?こんな所に入ってどうしたの?」
「…………」
「お前等、ちょっと離れてろよ」
「「「え?」」」

シロ達の頭を撫で、俺は彼等から離れた。

「出て来ていいぞ?抵抗する気もねぇしな」

 ザッ

「「「!?」」」

俺が言った直後、武器装置を構えた青い制服の奴等が俺を取り囲む。

「誘導、ご苦労様でした。ツバキ」
「っ、姉上……」

そして、奥から出て来た女をツバキが複雑そうに見た。

「どういう事……?」
「クロ!」
「じっとしてろ、シロ」

此方に来そうなシロを留めた時……

「捕えなさい」

 バチィ

「っ……!!」
「クロ!!」

帯状の武器装置が俺に巻き付くと同時に体が痺れる程の電流が流れる。

意識が飛びそうになるのを堪えるが、俺は膝をついた。

「これで気絶しないとは……流石ですね、厄災よ」
「!?」
「クロが厄災?そんな筈ない!だって、クロは……「シロ、余計な……事言うな」クロ!?」

俺は女を見上げる。

「此奴等は俺が騙して巻き込んだ……その意味くらいは分かるだろうな?」
「……いいでしょう。報告でも彼等は無知なのが分かっています」
「は、ならいい……ぅっ」

再び電流が流れ……俺は意識を飛ばした。





「…………」

目を覚ますと、俺は簡素なベッドの上に寝かされていた。

手首には枷。

魔力を纏えない所を見ると、そうやら魔封じが仕込まれてるらしい。

視線を横に向ければ、檻。

窓も光も無い……騎士団の地下牢って所か。

 カツン…カツン…

「起きたみたいですね」
「あ?」

そんな檻の先に、人懐こい笑みを浮かべた青年が立つ。

ああ、此奴が……

「俺を捕まえさせたのは、お前か」
「ええ。どうです?かつて貴方を助ける為にと作られた騎士団に捕えられる気分は?」
「気色悪い喋り方すんじゃねぇよ」
「……やはり、聞いていた通り、無駄に勘がいい男だ」

その言葉と共に青年は笑みを消した。

「で、俺に何の用だ」
「勧誘だ」
「はぁ?」

何言ってんだ、此奴。

「お前の中ごと此方に来い。そうすれば命だけは見逃してやろう」
「はっ、誰かさんは俺を殺したがってたみてぇだけどな」「?……ああ、アレか。私が命じれば問題ない。お前は此処で無駄に殺すには勿体ない人材らしい。なんなら、上に召し上げを検討してもいいくらいだ」
「……良い事を教えてやる。千年前じゃやるつもりは無かったけどな……生き残った以上、その上を潰すつもりだ」

俺の言葉に青年は心底不思議そうな顔をする。

「何故。この時代にはお前の守護する者はいない。千年前だろうと貴様は裏切られた身だろう」
「だから、遠慮なくやるんだよ」
「……そうか。ならば、お前はあの者達の言う通りに処刑しよう」

そう告げ、青年は立ち去った。

《アレは間違いないぞ》
「だろうな」
《どうする?このままではお前と私は死ぬらしい》
「お前、それ困んの?」
《いや、まったく》

そう言うと思ったぜ。

どっちかというと、俺と心中したいだろうし。

《勘違いするな。生きるのであれば、共に見て行きたいと思っている》
「分かってるわ……奴が騎士団に居る理由は、俺を捕えるだけじゃねぇだろう。そんなら態々騎士団に入る必要はねぇ」

その気になりゃ、奴は手下なんざ幾らでも作れるからな。

《お前はオマケか。ならば、真の目的は……》
「勇者でも滅多に近づけねぇ存在。俺は例外だった、もう一人の唯一……其れを継ぐ者は存在している」
《姫巫女、か》
「……クロ!」

俺達が会話していると、何処か焦った表情のツバキがやって来る。

「明日、クロを処刑する、と……」
「はっ、俺を消したくて堪らねぇって訳か」
「……やはり、性急すぎる。もう少し、クロを見れば……」「何をしているのです」
「「!」」

ツバキの後を追う様にやって来た女。

「……っ姉上、クロは決して悪い奴ではないのだ!ましてや厄災等では……」
「彼が厄災である事は勇者様が証言してくれました……あまり、他人の弟を惑わせないで貰いましょう」
「っぐ……!」

枷が僅かに光ったかと思うと、魔力がごっそり持って行かれる感覚がし、ベッドに倒れ込んだ。

「姉上!」
「貴方も……いい加減成長しなさい。それでは立派な騎士とは認められません」
「っ!!」

そう告げ、女は去っていく。

「クロ……すまぬ、俺は……」
「ツバキ……彼奴、等は……?」
「シロ達の事か?彼等は念の為にと騎士団で保護されているのだ」
「そう、か……ストラップ」
「え?」
「絶対に……持っとけよ……」

そうツバキに言い……俺はまた意識を飛ばした。




「《何と愚かしい事だ。お前も、私から魔力を吸わせて置けば良いものを……》」
「……クロ?」
「《其れは私に有らず。あの者の言う通りにすれば、お前達の未来は無いと思え》」
「どういう事なのだ」
「《貴様に言った所で理解は出来ぬだろう……シロを何としてでも処刑の場に連れて来い》」
「え?」
「《アレなら、必ず阻止しようと掻き乱す筈……クロを少しでも信じるならば、必ずや連れて来い》」
「……その前に、お前は誰なのだ。何故、クロの中におる」
「《……時が来れば分かる。クロの狙いも、な》」
「………………」


To be continued.

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