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千年寝た勇者と千年後の旅物語ⅩⅢ

俺はテキトーな所に座り、俺の周りにシロ達が座る。

「何から話したもんかな……先ず、厄災ってのをお前等は何れくらい知ってる」
「伝説くらい?」
「俺の時代でも、厄災は魔物を率いて汚染する奴だと言われていた。ただ一つ違うのは……厄災は人の中に潜むという情報」
「!!」
「人の中に……」
「しかも、姫巫女か勇者に近い所に居る」

俺の時は両方だったけどな。

「其れって、親しい人が厄災だった?」
「ああ……だから、俺は厄災に問い質した」
「「「「問い質した?」」」」

歴代の勇者は裏切られたとかで、全力で倒しに行ったらしい。

殆どの勇者は一人で戦って余裕も無かったっつー話だし……俺はまだ一緒に戦ってくれる奴がいたから余裕があった。

だから……

「胸倉掴んで問い質したなぁ」
「クロって、たまに雑というか……」
「仕方ねぇだろ。俺は育ち良くねぇんだし」
「え?そうなの?」
「歴代の勇者は貴族からが多かったらしいけどな。俺は孤児院育ちの平民だし」
「「「「そうなの!?」」」」

そんなに驚く事か?

「因みに姫巫女もそん中に居たし、厄災は長兄だったな。初代騎士団長の弟も勿論そうだし、騎士団メンバーはほぼ孤児院出身だったな」
「えぇええぇぇ!?」
「こ、濃い孤児院なのだ」

後から考えりゃそうかもしれねぇな。

けど、だからこそ俺達だけの強い絆があった。

其れこそ、厄災だからと諦めたくねぇくらいには。

「其れで、厄災は上から世界……つーより、人間が其れ以上繁栄させねぇ為のリセットする為に創られた役割だった」
「人間を繁栄させない為?」
「というか、上って……?」
「神」
「「「「…………え」」」」
「だから、神」

厄災は元々伝説の兄妹と親しい間にあった元人間だったらしい。

が、その人間が神に因って厄災の役割を強要され、何百年も何百年もリセットさせられる。

「……それ……」
「……酷い」
「上の奴は人間の繁栄阻止の為を理由に、一人の人間を犠牲にした。厄災を倒した所で、上の奴等によって100年後には再生させられる……だから、俺は封じる事を選んだ」
「だから?」
「そういえば、何処に封じたの?」
「ん」
「「「「ん?」」」」

俺自身を指差すと、皆が首を傾げた。

「俺の中に厄災を封じた」
「へ?」
「クロの中に……?」
「おう。俺の中に封じて、神から護る。そして、俺が死んだ時に魂を混ぜて一緒に消滅する。そうする事で二度と利用されない様にする予定だった」
「消滅……!?」
「何でそんな事を……」
「正直俺も戦いで疲労困憊してたからな。封じる事以外出来なかった……だが、今は違ぇ」

俺も、此奴も回復してる。

なら、例え裏切られた世界を敵に回したとしても……

「俺は神を相手取る」
「「「「……はぁ!?」」」
「厳密には天界との境を完全なものにする」
「天界との……境?」
「これ以上、上の奴等の好きにはさせねぇ。まだ奴等は地上を見て、自分達の遊び場として人間見てる。だから、俺は上がそう簡単に手出し出来ねぇ様に、せめて完全に世界を別つ為に動く」

……眠る前もそれを考えていた。

だけど、俺自身疲労していたし、勇者になる事を選ぶ程に護りたかった仲間を巻き込みたくはなかった。

「俺はもう遠慮しねぇ」
「クロ……」
「……此処からは、本当にお前達の好きにしろ」
「俺達、の?」
「俺は少なくとも上を相手にするからな。勿論、新しい厄災とも戦う。それでも、もうやるって決めた」
「「「「…………」」」」

俺の言葉に皆は顔を見合わせる。

「俺は今日、此処でもう一つ確かめる事を調べる。そして、明日には発つ。如何するかは其れまでに決めろ」

そう告げて俺は立ち上がった。

さて……例の場所を探らねぇと。

《いいのか?》
「何がだよ」
《お前が旅の同行を許可したのは──》

……やっぱり気付いていたか。

「だとしても選ばせねぇとな……俺は強制されたけど、勇者として戦う事を選んだんだしな」
《……そうか。お前がいいなら其れでいい》

俺はもう、止まらないと決めたからな。



To be continued.

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