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千年寝た勇者と千年後の旅物語Ⅲ

魔獣の襲撃から数日後。

何度か魔獣が現れたが、俺の魔法程度でも一発でも倒せていた。

「クロ、何を作ってるの?」
「ちょっとした準備」
「準備?」

魔法で作った石に魔法陣を刻んでいく。

やっと必要な分の準備が出来た。

物を作んのは好きだけど、魔法が関わってくると面倒だな。

「クロ!シロ!」
「「ん?」」
「良かった、まだ見付かってないね」

やけに焦った様子のニールがやって来る。

「どうした?」
「何か、変な恰好した男が金目の奴を探してるって。今、広場で村長が相手してる」

金目……確かに俺の瞳は金色で、シロの瞳も琥珀色だが見ようによっては金色に見えんな。

「金目を探してる……」
「なんか、凄い嫌な感じがするんだよね」
「……ソイツ、耳が尖ってたか?」
「え、うん……って、クロ?」
「シロ、来い」
「え?うん」

シロを連れ、村の広場へと向かった。

慌ててついて来たニールや途中で会った村人からは隠れる様に言われるが、テキトーに誤魔化しつつ一本の箒を拝借して進む。

「金目の奴を出せば良し。出さねば……この村は魔物に食い尽されるだろう」
「脅し、ですか……申し訳ないが、それに屈する訳にはいきませんので」
「何だ、てめぇか。屑野郎」
「「!!」」

耳の尖った男と村長が同時に俺へと振り返った。

「相変わらず人間のフリしてんのか」
「何故貴様が居る!?貴様は、千年前の……」
「ハッ。んな事はどーでもいい。この村に何の用だ」
「……貴様が居るのであれば、決まっている。今度こそ貴様を葬る!!」

そう言うと屑野郎の後ろに魔法陣が浮かび、其処から魔獣が出て来る。

「成程?魔獣が弱かったのはお前の召喚した奴だからか。シロ、よーく見とけよ?」
「え?うん……?」
「火魔法・特大火炎」

特大級の火炎玉が魔獣を一掃する。

「なっ……」
「ハッ、雑魚しか召喚出来ねぇのは相変わらずか」
「舐めるな!!」
「おっと」

屑野郎は今度は剣を召喚して、襲い掛かって来た。

それに持っていた箒に白色の魔力を流して受け止める。

「俺に接近戦で挑むとか、そっちが舐めてんのか」
「確かに普通なら、剣帝と呼ばれたお前に敵うまい」
「剣帝は止め……!」

咄嗟に屑野郎を蹴り飛ばし、箒を放り投げる。

「気付いたか」
「…………」

箒には何時ぞやの紋様。

つまり、侵食されていた。

『ギャハハハハ!!』

其れを証明する様に、箒は一人で動き出し……魔獣と化す。

「チッ、借り物だっつーのに」
「そういう問題!?」
「風魔法・風刃」

風魔法を箒に叩きこむが、今度はレジストが起きた。

《アレはお前の魔力を纏って魔獣化した。お前の魔法にはレジストが起きるのだろう》
「だとしたら、俺以外の魔力が必要な訳か」
《私のを使えばいい。問題は……》
「其れに耐えられる物が必要って訳だ」

箒魔獣の攻撃を避けながら石を拾い、今度は黒色の魔力を流す。

が、石は俺の手の中で崩れた。

木の枝や武器になりそうな農具も同じ。

「チッ」

足に流せば、一度は攻撃できたが靴が保たずに壊れた。

これじゃあ、次の攻撃は難しい。

「クロ!」
「!」

シロが何か投げてきて、咄嗟に受け取る。

「?」

其れは灰色の四角い棒。

「横のボタンを押して!」
「ボタン?」

確かに横側には突起が付いていた。

それを押すと……

「!」

警棒の様な物に姿を変える。

其れに黒い魔力を流した。

 ピキィ

小さく音がなるが、此れならいけそうだ。

「抜刀……」

迫る箒魔獣に構える。

「纏」
『ギャッ!』

警棒でも……魔力を込めれば、強靭な一撃を放てる剣となった。

結果、箒魔獣は消える。

「くそっ……余計な真似を!!」
「え」
「!!」

屑野郎がシロへ魔法を放った。

咄嗟にシロの前に割り込んで警棒を構えるが……

 バキィ

「タイミング悪い」

警棒が壊れてしまう。

傷を負うのを覚悟した時……

「グッ……!」
「なっ」「叔父さん!?」

村長が俺達を庇った。

後ろに倒れる村長を支えると、顔に魔法が当たったらしく、顔に文様が浮かんでいる。

「てめぇ……」
「っ!!」
「ブッ殺す!!」

よくも恩人かつシロトの子孫を傷付けやがったな。

「火魔法×風魔法……業火の竜巻!」

怒りに任せて強い魔法を放った。

「ブラン……此れを、クロくんに」
「!黒い……武器装置」
「甘いぞ!!」

炎の竜巻は屑野郎の剣に触れた瞬間に魔獣化した。

ああ、クソ面倒くせぇ!!

「クロ!落ち着いて、此れを使って!!」
「あ?」

持たされたのはさっきの棒の黒いバージョン。

が、さっきと違って突起は無い。

「どうやって使うんだよ」
「え、えっと」
「クロ!村長が魔力を流してって!」

村長を抱えていたニールがそう叫ぶ。

魔力……?

取り敢えず黒い魔力を流した時……黒刀へと姿を変えた。

「……有り難いな。一刃・纏」

炎と風の魔獣を横の一閃して切り裂く。

そのまま屑野郎に剣先を向けた。

「そんなもの……また侵食で魔獣化させてやる」
「……そりゃどうかな。二刃・纏」

縦の一閃で屑野郎の剣を斬り壊した。

「なぁ!?」 
「俺が一番得意なのは魔力を纏わせる攻撃。其れに、此奴は特製らしい」
「くっ……今回は退く。だが、貴様は必ず殺す」

 ブゥン

「……チッ」

大量の蜂の魔獣。

其れを始末している間に屑野郎は消えている。

「ヴァイス!」

気配すら無い事を確認し、村長に駆け寄った。

「くっ……ぅ……」

指輪を当てて浄化魔法を使うが、今度は紋様が光を拒絶する。

「ダメだ……このままじゃ叔父さんまで父さんみたいに居なくなっちゃう!!」

シロがそう言って加勢してくれるが、其れでも紋様は消えなかった。

「……浄化が使えない」
「え?」
「ヴァイス、右目は諦めてくれ」

紋様をヴァイスの右目へと……封印する。

「消えた……の?」
「いや。右目に封印した」
「っ……」
「「!」」

村長が目を開けると、右目は虚ろな白色と変化していた。

「……助けて下さったんだね」
「助けれてねぇよ。お前の右目に封じただけだ」
「助けて下さったんだよ」
「右目はもう使えねぇ。其れに、人体に封じたって事はお前の命も削る事になる」
「「!」」
「構わないさ。私は十分生きたからね……ありがとう」

村長が俺の頭を撫でる。

……このままにしておけるかよ。

「暫くは安静にしてろ」
「クロくん?」

村長から離れ、今まで準備しておいた六つの石を上に投げた。

「結界魔法……展開」
「「「!」」」

石は其々別々の場所に飛んでいき、光で繋がり結界を形成する。

その結界が目視出来なくなると、村長へと振り返った。

「今まで世話になった」
「……行かれてしまうのか」
「ああ。放置は出来ねぇし、奴は俺を狙って来るだろうからな」
「クロ……」

シロとニールの頭を撫で、俺は一旦家へと帰る。

そして、用意しておいた荷物を持って……村を出た。

前以て図書室から地図を印刷済みだ。

「取り敢えず目的地は……王都、だな」

先ずは大きな街へと向かうか。



To be continued.




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