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千年寝た勇者と千年後の旅物語ⅩⅠⅤ

一人奥の部屋を調べる。

「クロ、ちょっといい?」
「……おう」

そんな俺の所に来たのは、シロだった。

「クロが何をしようとしてるのかは分かったよ……あの村を襲ったのは……」
「あの糞野郎は、眠る前に殺り損ねた」
「凄い嫌いだね」
「……彼奴は強くねぇ。けど、魔物……今は魔獣化させる侵食に長けてやがった。俺の時代でも、彼奴は先生を手に掛けやがった」
「先生?それって、孤児院の……」
「……優しい人だった。だからこそ、あの糞野郎は許さねぇし、此れ以上好きにさせねぇ」
「そっか。俺も許せない。叔父さんの仇を討ってやりたい」
「死んでねぇけどな」

奥の部屋に置かれていた魔法石を拾う。

「それってさっきの?」
「用途は違ぇけどな……地図地図っと」
「はい」
「おう」

シロが近くの机に地図を広げた。

「つーか、お前は俺と来んのか?」
「うん。最初からそのつもりだからね」

……そういう所は、遺伝なのかね。

「……俺とシロトさんって、似てる?」
「生まれ変わりをマジで疑うくらいには」
「へぇ」
「けど、違う」
「!」
「シロはシロだ」

シロの頭に手を置く。

そして、地図の上に魔力を込めた石を置いた。

「うわぁ」

魔法石から放たれた光が地図の上を移動する。

「コレ、何?」
「四大元素。地水火風の輝石の在処を示してる」
「輝石?この石?」
「此れは魔法石。石に魔力を込めた人工。輝石は自然にある魔力が固まった天然」
「それが必要なの?」
「おう……此れを回収しながら、俺は上も厄災も相手取る。今までみてぇな旅は出来ねぇ」
「それでも行くって決めた」
「……そーかい」

一度決めたら貫く。

こりゃ厄介だな。

「んじゃ、此以上は言わねぇ」
「それで大丈夫。どこから行くの?」
「此処」
「?湖?」

現在の地図では大きな湖の絵が描かれている場所。

其処に青い光が集まっていた。

「俺が眠る前の時代では、最も美しいと言われた街……水上都市ヒュドール」
「水上都市……」
「此処から一番近ぇ。此処で水の輝石を手に入れる」
「分かった。明日出発だっけ」
「おう。他にも調べてからな」
「手伝うよ」
「ありがとな」




「あ、此処に居た」
「「ニール」」

テーブルに地図と残されていた魔法石を並べていると、ニールがやって来る。

「考えたか?」
「考えたけど、よく分かんなかった。話が壮大過ぎる」
「「まぁ、確かに」」
「だったら、ついて行く。最初と変わらずね」
「そっか」
「まぁ、ニールの銃があるのは有難いしな。頼むわ」
「うん」
「え、俺は?」
「まだまだだな」
「えぇ~……」
「私の魔法は?」

その時、アリスがニールの後ろから顔を出した。

「アリスも来るの?」
「うん。そのつもり」
「アリスは王都に居た方がいんじゃねぇか?」

アリスと全く同じ顔をした姫巫女。

多分、アリスの……

「いーの。確かに驚いたけどさ、私の家族は『ハートランプ』に居るんだから。それに、ここまで来てスルー出来ないもん」

アリスが笑顔でそう言う。

と、ニールがシロを肘でついた。

「?アリスが居てくれると頼りになるよ。これからもよろしく!」
「う、うん。よろしく」

首を傾げながらも笑顔で言うシロに、アリスは顔を赤らめて頷く。

……何で、ニールは自分の方には気付かねぇんだ。

「………」

そして、ツバキが静かに歩み寄って来た。

「……正直、国に仕える身としては神に反抗するのは不味いとは思うのだ。それでも、俺は……クロを裏切った。だから、今度はクロにつく」
「きにしなくていいんたけどな。まぁ、ついて来てくれんなら助かるわ」
「うむ」

結果、全員一緒に行く事に。

《良かったな》
「……そう、だな」



To be continued.

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