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千年寝た勇者と千年後の旅物語Ⅷ

休息を終えた俺達は次の街へ向かう。

「アレがカイロ川です」
「綺麗な川だね」

カイロ川は森を別つ様に出来た川だった。

んー……何か見覚えあんな。

「この先の大きな橋を渡れば、次の街に着くのだ」

ツバキの案内で進むと、大きな橋に差し掛かる。

「彼処からバスに乗れば……」
《来るぞ》
「!何処だ?」
「え?だから、彼処……」
《川だ》
「クロ?」

橋の下を覗いた。

すると、川の中から蛙の様な魔獣が何匹か出てきた。

何処からなら他の奴等に気付かれずに済む?

そんな事を考えていた時だった。

「きゃぁああぁあああ!!」

叫び声がする。

其れに振り返れば、更に半魚人みたいな魔獣が橋の上を通ろうとしていたバスを襲っていた。

「くそっ!!」

半魚人をさっさと始末しねぇと被害が出る。

だが、蛙が魔物と同じなら放置は出来ねぇ。

「クロ!!」
「バスの方は僕達が何とかする!」

シロとニールが強い目で言ってきた。

「……シロとニールは無理しねぇ程度に倒せ。アリスとツバキは避難をさせろ!」
「「分かった!」」
「うん、任せて!」
「わ……分かった」

一先ず二人に任せ、俺は橋の下へ飛び降りる。

 ニョロ

蛙の舌が伸ばされるのを、武器装置を使って斬り払った。

此奴の厄介な点は毒を分泌し……

 ビュンッ

「魔法使う所なんだよな」

飛んで来た水魔法の刃を避ける。

「風魔法・応用……雷」

 バチバチバチィ!!

雷が川へ落ち、更に蛙の魔獣へと広がった。

「此れで全部か?」

どうやら蛙は全部倒せたらしい。

確認をし、俺は橋の上へと戻る。

「クロ!!」
「!」

シロが悲痛な声で俺を呼んだ。

その先には……倒れている人々。

恐らくバスに乗っていた人達だろう。

側には泣きじゃくる子供も居る。

「…………」

倒れている一人に触れた。

……手遅れ、だな。

「お母さんを助けて!」
「っ、もっと俺達が早く助けてあげれれば……」

子供が俺の服を掴む。

 『ひっく、ひっく……うわぁああん!!』
 『何で、何でもっと早く来てくれなかったの!』
 『──は勇者なんでしょ!何で──を助けてくれなかったの!』
 『──なんて……勇者じゃない!』

「……無理だ」
「「えっ」」
「幾ら何でも死んだ奴の治癒は出来ねぇ」
「え、あ……」
「俺に泣いて縋るな。諦めろ」
「クロ!その言い方は……」

ツバキが子供を抱えて俺を制して来た。

「どう言おうと、事実だろ」
「しかし!」
「……止まれねぇんだよ。誰が、死のうとな」

例え、近しい奴が死んでも俺は……

「クロ?」

シロの戸惑った声にハッとなる。

……クソッ、この現場があの頃と被っちまった。

「……アリス」
「う、うん?」
「生き残りは?」
「えっと、この前教えて貰った魔法で治したよ?」
「ツバキ」
「……何だ」
「騎士団は魔獣に対抗出来るか?」
「……最近、対抗手段を見付けたと聞いておる」
「その騎士団に連絡つくか?」
「っ……通報、という手はあるのだ」
「なら、通報してこの近辺に着かせろ……俺が居る限り、また魔獣は現れる」

そう言えば、シロの周りに居た一般人が怯えた目で俺を見てくる。

「お、お前が来たから……襲われたんだ!」
「早くどっか行け!!」
「お前が居たらまた襲われる!!」
「ちょ……」

そして、俺を追い出す声に変わった。

《……ふん。こういう所は人は変わらんな》
「……そうだな」
「あ、クロ!!」

俺はまた川の方へ降り、上流へと向かって歩き出す。

「ちょっと、クロ待って!」

そんな俺を彼等が追い掛けて来た。

「……クロ、ごめん」
「……あ?」
「俺、あんまり覚悟出来てなかった。叔父さんはクロが居たから偶々助かっただけ……ほんのちょっと、クロが離れてただけなのに、俺……助けられなかった」
「…………」

……助けられなくて泣く所は遺伝かね。

ポロポロと涙を流すシロの頭を撫でる。

「……どう頑張っても、助けられる数は限られる。さっきみてぇに罵倒される対象になる事もある……それでも来るか?」
「……っ、行くよ!行くって決めたんだから!」
「んじゃあ、泣き言言わずについて来い」
「あ、僕も行くから」

シロの後ろからニールが顔を出しながら言って来た。

「……今回の件で、僕の未熟さを知ったからね。このまま引き下がれないよ」
「私も一緒に行く。私は私を助けてくれたクロを信じてるもん」
「……申し訳ない」
「?」

急にツバキに謝られて首を傾げる。

「先の発言は許せない……が、そもそも私は何も出来とらん。私にはクロに何か言う資格は無いのだ」
「……ツバキ、武器装置持ってるか?」
「?うむ」

手を出せば、ツバキは武器装置を渡して来た。

……コレは……

「アレ?ツバキの武器装置のココ、何で窪んでるの?」

シロの言葉の通り、ツバキの武器装置は一部が凹んでいる。

「さあ?渡された時からこうだったのだ」

俺は一つの石……魔法石を取り出し、凹みに填めた。

「「「「填まった……」」」」
「此れならお前も戦えるぞ」
「!」
「まぁ、あくまでその石が壊れるまでだけどな」
「か、忝ない……」

……やはり、武器装置は眠る前にあったアレを基にして作られてるんだろうな。

《右》
「ん?」

言われた通りに右を見ると、木製の橋を見付ける。

その先は森へと繋がっている様だった。

地図を出して森の先を確認する。

「あの森……抜けれそうだな」
「ああ、あの橋が出来る前の通り道なのだ」
「じゃあ、アッチから行こうよ」
「異議なし」
「バスに揺られるよりかはマシだもんね」
「……道案内は任せて欲しいのだ」
「よし、行くか」

そして、俺達はトラブルがあったものの、先へと進む。






今更単語紹介。

武器装置……その名前の通り、武器になる装置。お守り兼いざという時の防犯的な物として、10歳になると国から配布される。
配布品はスイッチを押すことで警棒になる。
クロ達のは改造品で、魔力に反応して其々に合った武器になる。
触れてないが、配布品のスイッチの所に石が填められている。

クロのは白、シロのは黄色、ニールのは青の石が填められている。
大きさは500mlペットボトル程。



To be continued.


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