10日間

「空っぽの心に何を詰め込もうか?」

1日目 ピーマン
私はまず、ピーマンを詰めてみることにした。
ピーマンの肉詰めは肉のほうを詰めている。従ってピーマンは孤独だ。
私はピーマンを注意深く眺めた。ピーマンを受け入れようとした。
しかしうまくいかなかった。

2日目 うどん
次に私は、打ちたてのうどんをかきこんだ。
白くてツルツルしてて、なんというか無罪放免である。
つゆがしょっぱくて思わず咳き込んだ。

3日目 ジンバブエドル
いくつあっても困らないもの、なーんだ。
答えは可能性。幸せそのものよりも可能性には価値がある。
人は住む世界が広いほど狭い世界に酔っ払う。
お金は可能性であるぶん、幸せそのものよりも素晴らしい。
私は100億ジンバブエドルを現代アートとして購入した。
しかしうまくいかなかった。

4日目 コンクリート
コンクリートを流し込むことにした。
ヤクザは標的をドラム缶に放りコンクリートを流し固めて東京湾に沈める。
コップ3杯なみなみのコンクリートが心を埋める様子を明確に想像した。
しかしうまくいかなかった。

5日目 ポップコーン
軽くて弾けるポップコーン。
殻を破ったやつから先に食われる運命。
しまいにゃ欠片は四散。なんのために生まれてきた?

6日目 ドーナツ
私とドーナツは似ている。これは片思いだと思う。
ドーナツの穴に何かを期待をしすぎている自分がいた。
たくさんのドーナツを買って食べたところ、
どうにも口がパサついたあげくその甘さに卒倒した。

7日目 正義のヒーロー
いつだってシニカルに構えている、
そんなあいつらはヒーローになりたかった。
私は伸ばした腕をぐるっと一周させてみた。
タンスにぶつかった腕はそのまま電気の紐に絡まった。

8日目 あなた
どんな雨でも、どんな風でも、
あなたの笑顔を揺らすことはできなかった。
誰もいない教室で陽だまりに揺れる影のような、
憂いを帯びた微笑みを見るだけで僕の心はいっぱい。
あなたは世界一素敵な人だ。

9日目 ホコリ
彼女の指先が誌面を伝うと埃が舞った。
ここにある世界地図はどれもはるか昔のものだ。
小さな指はそのまま太平洋に抜けてブラジルへ。
僕が地図を思いきりズラすとそこはインドネシアになった。
際限なく舞うホコリに思わず咳き込んだ。

10日目 ねじ
2つのネジが連なることはない。従ってねじは孤独だ。
光の中を見知らぬドライバーに連れられて興奮したのも束の間、
おさまる場所におさまって、そこで一生を過ごす。
そこは思ったよりかは窮屈ではなかった。

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