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私の原点

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NHKの取材者たちの「原点」はどこに?ルーツを語った記事のマガジンです。
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#取材

「怖い、怖い、怖い…」熊本地震 あの夜、私はデスクと抱き合い絶叫した

「怖い、怖い、怖い…」 とっさに口をついて出た。熊本県益城町の道路上、時刻は午前0時を回っている。 車外に出ている最中、突き上げられるような激しい揺れ。その一瞬、電柱が歪んでいるように見えた。 「うわあああああ」 しゃがみこんで、デスクと抱き合った。 真っ暗闇の中で人工的な車の明かりだけが遠くに見える。 次の瞬間、握りしめていた携帯電話が振動し始める。 けたたましい緊急地震速報の音が、ずっと鳴り響いていた― 7年前の熊本地震で、私たちは震度7が襲った災害現場に

24時間365日臨戦態勢 NHK社会部災害担当デスクを突き動かす“おまえの原点は何だ?”

「あっ揺れた…地震!」 「この大雨いつまで続くのか…大丈夫だろうか」 そんな時、すぐにNHKをつけて情報確認をする方もいらっしゃると思います。 NHKの報道の根幹のひとつは、間違いなく災害時の報道です。 初任地に赴任したNHKの新人職員。 職種問わず、まずたたき込まれるのが災害報道への心構えと行動です。 大きな揺れを感じたら、呼び出される前に出勤。大雨や台風の時は、気象台や各市町村、警察・消防と連絡を取り合って情報収集。 技術チームはいち早く中継態勢を組みます。

消えてしまった文字が教えてくれたこと

テレビの生中継にハプニングはつきものだ。 笑ってすまされることもある。 だが私の場合、職場を離れるきっかけとなった。 モニターの文字が消えたその日、私は政治部の記者として生中継に臨んでいた。与野党攻防の局面を伝えるためだ。 国会記者会館の簡易なスタジオにはプロンプターというモニター画面がある。記者は、目の前の画面に映った原稿を読み上げていけばいい。便利な道具だ。 2分程度の短い原稿。政治部に配属されて丸9年。すでに中堅記者になっていた私にとっては、難なくこなせる仕事のは

「好き」を追い続けると、世紀のスクープに出くわすこともある。どこへ飛ぶのか“ちょうちょ記者”

幼少期に出会った1頭のモンシロチョウが導いた憧れの地、ブータンの秘境。NHKの報道現場で好きなことを追い続けて20年、変わり種と言われながら40半ばの今も新たな情熱と興奮が止まらない。そんな私の「取材ノート」をご覧ください。 鉄道少年が「チョウ」と衝撃の出会いはじめまして斎藤基樹といいます。チョウが好きでこれまでの人生をチョウと過ごしてきました。 子どものころは駅近くの小さなアパートに暮らし、毎日母親にせがんでは線路沿いの金網にへばりついて電車を見るのが好きな鉄道少年でし

ちょうちょ記者、ついに”貴婦人”ブータンシボリアゲハと遭遇したけど「おまえが叫ぶな!」

幼少期からチョウを追いかけてひょんなことからNHKの記者になり、取材でつかんだ「幻のブータンシボリアゲハ」の生息情報に、興奮した勢いで専門家による調査隊を自ら結成。周囲のありがたい手助けでついにブータンに降り立ったという、はい、斎藤基樹です。 (前編の記事はこちらです) 8月4日 みんなそろって首都出発!2011年7月に羽田を発ち、ブータンに到着してからの数日は関係機関との取材交渉に追われました。というのもブータンシボリアゲハが生息するとみられる谷は中国やインドとの国境近