「心と実存 唯識」を読んで
東京大学の高橋晃一氏による唯識思想を事物と分別に関する思想から辿っていく一冊。本書では、どのように唯識思想に迫るのか、という道筋を主要な経典を読み解きながら、解説をしていきます。本書は、「菩薩地」で述べられた「言語で表現できな事物が存在する」というところから議論が始まります。ここから、存在論がどのように体系化されていくのか、ということが、他の経典を参照しながら、議論をしていきます。五事説、三性説といった教理が、どのように事物をとらえていくのか、理解されているのか、ということを、経典に書かれた文章を読み解くことで説明していきます。本書では、大乗仏教での論の組み立て方に触れつつ、実際にその内容を読み解く、という流れで進んでいきます。そのため、どういった思想から、このように考えられるのか、ということが理解しやすくなっています。といっても、仏教思想は簡単に理解できるものではないため、このように考えていけば良いのか、という道筋を本書は与えてくれます。本書を読むことで、複雑なものを分からないまま考えていく、複雑な物を考えるためにどういった姿勢が必要か、ということを考えさせられます。本書は、唯識思想が、どのように展開されて行ったのか、といったことを理解できるようになるのではないかと思いました。
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