「絵本とは何か」を読んで

月刊物語絵本「こどものとも」を創刊した児童文学者の松井直氏による「絵本」についての論考をまとめた一冊です。本書では、「絵本と何か」という問いを、著者自身の体験や、生活から考えた内容がまとめられています。実際に、編集者として、手探りの中で絵本を編集し、数々の名作を作り上げた著者だからこその絵本に対する鋭い考察は読み応えがあります。子どもの世界をどのように絵本が豊かなものとするのか、それを自身の思い出と、自分の子供たちがどのように絵本を受け止めていたのか、という様々な体験から考察されています。また、絵本の編集者としてだけでなく、絵本を愛する人間として、数々の絵本を読み、そこから何を学び取っていたのか、ということも読んでいて興味深い内容です。「絵本を読む」ということは、どういったことなのかを、子どもの側から見たときに、それはどんな体験なのか。そこから、子どもの世界を覗き込み、どのように子どもの想像力が世界を広げるのか。著者の絵本に関する考えは、現代においても、色褪せることはない内容であると感じました。本書は、著者の人柄を感じる率直な語り口で語られており、読みながら、読者自身が絵本とは何かを考えさせる、そんな内容でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?