「あなたに語る日本文学史」を読んで

詩人、評論家の大岡信氏による詩歌を中心とした日本文学の歴史を万葉集から近代俳句までを講義形式で述べた一冊です。本書では、時代ごとの詩歌に対する著者の知識の深さ、著者が何を面白いと感じたのか、といったことが軽妙な語り口で述べられています。本書で語られているものは、伝統的な意味で日本文学史を語るものではなく、著者が日本文学の中で愛着を感じれている部分が抽出されています。それゆえに、生き生きとした語り口で、その内容の面白さをじっくりと味わうことができます。詩歌が日本の歴史の中で、どのようにその当時の社会に受け入れられていたのか。詩歌の伝統と核心が、どのように歴史の中で受け継がれていったのか。これらが、横軸と縦軸となって、本書は独特の日本文学史を展開します。著者の知識の深さ、詩歌に対する愛着を感じる一冊で、読んでいて、日本の詩歌に興味を惹かれていきます。本書は、別な日本文学史に広がることも、また、より深いところにいくのも、読み手を自由にさせる一冊だと感じました。

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