「ことばへの気づき」を読んで
言語社会学者の松原好次氏による「ことば」にまつわるエッセイをまとめた一冊。サブタイトルにあるように、カフカの小篇を読んで書かれたエッセイを主としていますが、それ以外の事柄からも着想を得たエッセイも掲載されています。本書では、「ことば」を起点として、エッセイが書かれたときに起きた事件であったり、コロナ禍という社会について、著者が考えた内容が書かれています。本書は、数々の言葉を、様々な触媒を通して、さらに理解していく、という著者の実践が惜しみなく書かれています。普段私たちが、何気なく見過ごしている言葉の数々を、より具体的に考えていくことで、言語というものを通して、社会がどうあるのか、といったことが見えてきます。著者の目を通して、言葉を考えていくことで、そのような視点で見える世界がどのようなものかが垣間見えます。ここに、カフカの小篇を通すことで、カフカであれば、その社会に対してどういう言葉を投げかけたであろうか、ということが考えられていきます。本書を読むことで、カフカの作品の楽しみはもちろんのことながら、私たちが言葉、さらには、社会に対して、どのように振る舞っていくべきか、ということを考えさせられる一冊だと思いました。
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