「民俗学の思考法」を読んで

東京大学の岩本教授らによる現代の日本における民俗学を学ぶ人への入門書となる一冊です。本書では、民俗学的に物事を、どのように捉え、どのように見ていくのか、ということが述べられます。民俗学が、どのような立場から生まれてきたのか、という歴史を指摘し、私たちにとって、民俗学は何を見せるのか、を説きます。権力の周辺として、対主流として、主流の考えを相対化しようとする民俗学の姿を示します。そして、時間の流れの中で、民俗学は個人にとって、どういうものなのかを示します。次に、民俗学の姿を描き出し、現代において、民俗学は何をして居るのか、を具体的に説明していきます。民俗学がこれまで中心的に見てきた出来事と、現代社会を取り巻くさまざまな事柄とを、どのようにつないで見ることができるのか、ということをテーマに沿って描き出します。そこには、現代において、当たり前に思うこと、疑問に感じることを、民俗学がどのように問うてきたのかを詳説します。私たちが受け継いできた文化というものが、科学技術と出会った時、どのように科学技術を受け入れてきたのか。私たちがモノを使うとき、それはモノに使われる、という関係も生まれていることを述べます。そして、私たちを取り巻く社会と、私たちの生き方のありようを見ていきます。これらのテーマは、身近であるがゆえに、当たり前なこととして疑問を感じにくいものです。そこに対し、異なる立場から問いを投げかける。個人としてより良い生き方を探るための問いを提示する、民俗学の姿が本書からは見えてきます。

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