「命に<価格>をつけられるのか」を読んで

コロンビア大学のハワード・スティーブン・フリードマン准教授による人の命についている「値段」に関する現実世界の価格の付け方、価格が意味することを解説した一冊。私たちが認識しているかは別にして、私たちには日常的に、命の価格がつけられています。では、その価格は、どのように決まっているのか。その価格には、どんな問題が潜んでいるのか。そのことを本書は、現実の殺人事件などの裁判で決められた賠償金、規制当局が、どのようにして規制を妥当であるかを示すのか。このような具体的な事例を通して、人の命の値段が、どう決まるのか、を示します。9.11同時多発テロの犠牲者につけられた価格。その価格は、どうやって決められたのか、ということを四人の架空の人物のケースから解説します。統計的生命価値(VSL)という指標が、どのように使われるのか。その計算方法と割引率など、さまざまな考え方とそれが含む問題を指摘していきます。犠牲者への賠償金の下限と上限の広さ、それがなぜ生まれたのか。それは、何を意味しているのか。価格の付け方の不公平さを著者は具体的に示していきます。現実世界の不公平(職業、人種、ジェンダーなど)が、人の命の価格に、なぜ反映されるのか。その論理を著者は指摘します。この論理を自覚することで、価格の付け方に潜む不正に対し、異議を唱えていくことが重要である、と著者は言います。人の命は、全て尊く、人の命に価格がつけられるときには、公平であり、そして、人権と人命が守られるようにしなければいけない、という著者の言葉は、現実の世界での不公平さ、不要に低い価格のために守られない人権と人命があることへの強い抗議と感じられました。

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