「ロバート・ツルッパゲとの対話」を読んで

「大人の幼稚さを通過して、もう一度純粋な子どもの目を取り戻すこと」というのが目的の本書。下手な哲学書よりも哲学をしている、最高にバカげた、そして、「お前は考えてるのか?」ということを問いかけられる良書です。軽快な語り口、ジョーク、著者の思考、親父ギャグ、とジョットコースターに乗りながら、万華鏡を覗き込んでるような、訳はよく分からないけど、とんでもなく、面白い読書体験でした。いや、訳は分かるんですけどね。本書で、「こいつは、バカだな」と言われてる人が、自分の中にもいるな、というのを看破されて、「だよね、バカだよね」と納得させられちゃう。そういう文章って、文体とか語り口によっては、すごく不快なんですよね。それが、本書だと、不快じゃないんですよ。これが不思議な魅力だな、と思います。読後感が良いんですね。だから、「俺はバカはやめるぞ」と。本書で掲げたテーマを、気がついたら、自分の中に入ってきているんですよ。こりゃすげぇ、と。こんな本、一生でそうそう出会えないぞ、と。哲学って、こういうことやぞ、という素晴らしい一冊でした。

語り口の軽妙さから、話がポンポン、と色んな方向に飛んで行きつつ、言っている内容の根っこの部分、というのが一貫しているので、著者は本心で言ってるな、ということが分かるのですね。そういう人の言葉なので、出てくる言葉に共感しつつ、反論をしようとするんですが、その前に出てくる著者の言葉に、黙らせられる。最後には、説得させられる。確かに、著者の言うことは面白いな、と。考える、体験する、ということが世界を面白くする方法なのだな、と思いました。

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