「ブッダという男」を読んで
仏教学者の清水俊史氏によるブッダの偉大さ、先駆性に迫る一冊です。本書では、世間で言われているブッダ像に対して、疑義を唱え、ブッダの姿に初期仏典を読み解くことで、迫っていきます。近年よく宣伝される「平和主義者としてのブッダ」「ジェンダー平等主義者としてのブッダ」が、どのような背景から生まれて来たのか、ということを仏典などを参照し、検討していきます。それに対し、著者は、実際にはどのように考えられるのかということを、丁寧に検証していきます。仏典では、神話的な超人としてブッダが示されます。そこから、超人的な要素を取り除いて行く中で、人間ブッダを描くという試みに、どのような落とし穴があるのか、ということを著者は指摘します。その落とし穴に陥らないために、初期仏典を当時の文脈を考えながら読み解く、ということを著者は試みていきます。著者は、この過程を通して、ブッダの先駆性とはなんだったのか、ということを描こうとしています。本書は、これまで、人間ブッダを描くという新しい神話に対して、新たな視点を与えてくれる一冊だと感じました。本書は、仏教、そして、ブッダという人の思想、先駆性を考えるためのきっかけとなる一冊だと思います。
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