「土偶を読むを読む」を読んで

縄文ZINE編集長の望月明秀氏による「土偶を読む」に対する反論書です。望月氏による「土偶を読む」の検証と、各研究者によるこれまでの縄文研究、土偶研究の紹介など、読み応えのある一冊です。本書での検証部分は、これまでの研究の積み重ねとして、どういったものがあり、そこから何が分かるのか、という点から検証が進んでいきます。検証部分以降の論説やインタビューといった内容から、現在までに分かっている縄文時代、土偶のこと、これまでの研究で分かっていることが、思っているよりも多いことが分かります。また、本書は、専門知がどのように社会と関わっていくのか、といった社会のありようといったものも提示されます。本書は、タイトルの通り、「土偶を読む」への反論となっていますが、その反論の射程の広さは、読む前に想像しているもの以上になっています。「土偶」というキーだけではなく、専門知がどのように社会と関わらなければいけないのか、と議論から、専門知批判に対する回答の提示も行なっています。本書を読み進めていく中で、「巨人の肩の上に立つ」という言葉の意味を考えさせられます。過去の研究、事実に真摯に向き合い、自身の仮説の検証を進めていくという態度の重要性が実践的なものとして分かってきます。本書は、そういった仮説検証に向かう態度を示しています。土偶の面白さであったり、今後の研究に対する期待であったり、仮説検証に対する態度であったり、数々のことに気が付かされ、面白い読書体験でした。

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