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ムシャーマの夜 @波照間島

2017年9月3日。波照間島に着いた日の夜。「練習がある」というので、早めに夕飯を終えみんなで公民館(?)へ。お盆のナカビに行われるムシャーマという行列の踊りの練習です。

「練習」と聞くと、舞台裏を覗くような、本番とは一味違った醍醐味がありそうで、なんかいいですよね…。日常と非日常の間に漂う表情や言葉、その一瞬一瞬にトキメキながら、写真を撮っていると地元の女性から「取材ですか?」と聞かれました。地元の人はこういう場で写真を撮ることは少ないようです。

場所を移動しながら写真を撮り続けていると、また別の人からも「取材ですか?」と声をかけられました。この方は、練習の途中に会場入りし、大きめのカメラを持っていたので印象に残っていました。私からすると、この方こそ「タイムスさんかな、新報さんかな。でも何もつけてないな。慣れてる感じだし… 毎年取材に来ている人かな」と思っていました。

聞いてみると、静岡県からの旅行だそうで。私の初めてのルームメイトは静岡県沼津市の出身で、沼津には2、3回遊びに行ったことがありました。ここで出会った方は、沼津市の隣の裾野というところからいらしたそうで。そんなこんなで話は弾み… お友達になりました。
30代になり、最近「友達ってどうやってつくるんだっけ…」とか思っていたところでしたが、こうして出会いがあるなら、一人旅もいいですね(どうやら波照間島というところは、巡り合わせの場所とも思われているようです)

以前に、多良間島の八月踊りを訪れた時にも印象的だったのが『棒術』だったのですが、ここでも棒がすごかったです。簡単そうに見えて、実際にやってみるとこれはすごい体力が必要だと思います。年齢を重ねるにつれ、演舞を見るときの視点が、「かっこいい!」とか「きれい」よりも、「これはキツそう!」とか体力視点になってきている自分がいます;この棒は、基本的な型はあるものの、それぞれの人でアレンジが入るそうで、それが見ごたえになっているようです。私は初めて見るのでよくわからなかったのですが、練習の場でも拍手や歓声に似たような声があったので、きっとアレンジが効いていたり、迫力があったりとか、そういうことだと思います。声にハリがあり動きもキビキビしていると格好いい〜!です。

棒のあとの太鼓も、初めて見るスタイルでとても興味深かったです。太鼓を持つ人と、叩く人が別で、ペアになっています。そのリズムもなんだか親しみがあって面白い。子どもたちもたくさん来ていて、太鼓の踊りを見よう見まねでやっていました。その様子を見ているおばぁたちが、「上手だよ!」「もうできるね!」と拍手喝采。世代をまたぐ関わり合いが日頃からあふれている暮らしは沖縄らしくて素敵だなぁと思います。

いつものようにあまり下調べをして行かなかった私はよくわかっていなかったのですが、「ムシャーマ」というお盆の行列はとても有名な行事だそうです。石垣島でお会いした方々も口々に仰っていました。

練習を見にいく前、おうちのお母さんが、「踊ったらいーさーね」と、言ってくれていたので、私も練習に参加するのか!?と少しドキドキしていたのですが、この日は観るだけに終わりました。今思えば、私の意向をちゃんと確認してからという配慮だったのだと思います。練習のあとは、かるく飲み会が行われていました。男女わかれて飲んでいます。古風なのか、島のしきたりなのか?こういう場面はよく目にするような気がします。帰り道、女性同士で「3日間だから頑張れ〜」と励ましの声をかけ合いながら、それぞれのおうちへ別れていきました。ムシャーマの本番は翌々日です。

お盆の初日は、お仏壇を豪華に飾りつけ、お墓参り。それからはお線香を絶やさないように、親戚の方々が、かわるがわる訪問される以外は、「嵐の前の静けさ」ではないのですが、わりとゆったり時間が流れていたように思います。翌日のご馳走の下準備などがあり、お母さんはやはり夜遅くまで忙しそうでしたが…
ムシャーマの朝の集合時間を告げられ、(あ、やっぱり私も踊りに出るのね!)(何の練習もしていないけど…見よう見まねで大丈夫なのかな…!)と思いながら眠りにつき…

ムシャーマ当日。

衣装の着付けで女性陣がドタバタ!子どもたちも祭りのハレの気配を感じてか元気に走り回る!思春期なのか、練習のときはずっとムスッとしていた女の子も、お化粧をしてもらいニッコリしているのを見ると、やっぱり女の子ですね。

私は「ウマメーシャ」部門に参加させていただくことに。

わりと簡単な踊りなのか、行列出発前に軽く教えてもらっただけ!それも、久々に島に帰省したというような感じのメンバーも多く、みんな曖昧^^;! しまいには、「他の部落の人のを見てみて!」と(笑)。行列が終わってこんな話をすると、「それがウマメーシャーさ!(笑)」とみんな笑っていました。

木でできた馬を紐で巻きつけるのですが、これがなかなか痛いんです。行列は、朝9時頃からスタートでした。そんなに長い距離ではないんですが、先頭のミルク神の動きが超スロー!この役目の人がいちばん大変だとは思いますが… 炎天下の中、なかなか進まない行列、繰り返しの同じ踊り… なんだこの辛さは!途中で何度も動くのをやめたくなりましたが、一年に一度の重要な行事、やめるわけにはいきません… 列の前の人たちが声を出し、力一杯演舞している姿に鼓舞されながら、なんとか最後まで辿り着きました…。
こんな炎天下の中での踊りを毎年、100年以上も続けてこられたとは… 頭が上がりません。

この行列、夕方もあります。
朝の行列のあとは、広場で踊りや棒、太鼓など、各部落からお披露目。


私は途中で集落の散策へ出て、海へ行き… おうちに寄りご馳走をたらふく食べ、夕方の行列に備えました。

16:00。
西日がまたキツイ…!

さらに、「トメ」というのがあると言います。行列を終えると公民館へ。トメとは「〆」の意味だそうで、これに参加しないと、次のお盆まで1年中踊り続けていることになる、と。(それだけは勘弁…!)公民館への入り口も、トメが終わるまでこちら側から入ってはいけない、とか意味があるようです。
お祈りの言葉を述べる時間があり、その後はうさぎ跳び!? 最後はみんなで唄いながら円を描き… その様子はとても温かいものでした。

暑さで疲れた身体にさらにムチをうつかのように、棒、太鼓、最後の演舞です。最後の最後まで一生懸命な姿に心打たれます。

燃えるような夕日が沈もうとする頃、その反対側には月が姿を現しはじめ… どこからどこまでが「トメ」なのか。

このあとには余興も。

公民館をあとにし、家に戻ると、かわるがわるお客さんが。お線香を立てたあとのユンタクでは、あの人は上手だった、かっこよかった、あの踊りをしていたのは誰?......などなど、踊りの総振り返り!? この日の波照間の夜は、いつも以上に長いものとなりました。


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