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非対称型対戦ゲームの“ごっこ遊び”感が愛おしい【2020年4月フリーテーマ】

4月の2本目はフリーテーマ。

つい先日、かねてより期待していた『Predator: Hunting Grounds』が発売されたので、今回はそれに因んで“非対称型対戦ゲーム”のお話をしよう。

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俺は非対称型対戦ゲームがハチャメチャに好きだ。なんと言っても、自分がめちゃくちゃ強い存在としてプレイできるのがイイ。大抵のゲームでは、その“めちゃくちゃ強い存在”は悪役としてのポジションになるため、負けたとしてもストーリーを考えると気分的にまあいいかという気になる。

「悪の追手を振り切って、生存者たちは脱出しました」となれば、お話の流れとして気にすることはないではないか。

もちろん対戦という形式上、負けて悔しくないわけではない。しかし、いい勝負をして負けるなら悪役冥利に尽きるというか、本望とさえ思うのだ。逆に、相手に何のスリルも与えられず負けてしまったときが一番悲しいかもしれない。

とまぁ、そういう感じの話をしていくつもりだが、その前に恒例の宣伝といこう。

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強大な存在を操る楽しさと、その存在に連係して立ち向かうスリル、そして“ごっこ遊び”感

非対称型の最大の特徴は、その名の通り対戦する双方の扱うキャラクターの力加減が意図的に崩されていることにある。

多かれ少なかれ、“1体の強力な存在vs複数の常人”という図式は非対称型のセオリーとなっていて、1体側のプレイヤーは超常的な力を生かして蹂躙する爽快感を味わえ、複数側のプレイヤーは逃げるスリルや連係して敵の追撃を押し返す協力プレイの楽しさを味わえる、というのが魅力だ。

聞き取りをしたわけではないので、あくまでも俺個人の感想だが、上記の魅力に加え“ごっこ遊び感”というのも、重要な要素になっているように思う。


例えば、非対称対戦ゲームとしてもっとも成功したと言える『Dead by Daylight』

『Dead by Daylight』は、1人の殺人鬼が無力な4人の一般人を追い回すゲームであり、4人のプレイヤー側は殺人鬼を倒すことを目的としていない。ゲームの勝敗は、4人のプレイヤーたちが、殺人鬼に殺されないように脱出できるか、という点がカギとなる。簡単に言えば、やることは“鬼ごっこ”だ。

『Dead by Daylight』が流行した理由として、配信映えするとか、有名な映画の殺人鬼が出てくる、というのもあるだろう。しかし個人的には、“逃げる”という点に特化したからこそ、戦闘が苦手という層をうまく取り込めたというのも大きいと思うし、誰もが子ども時代にそのスリルを味わう“鬼ごっこ”というシンプルなゲーム性だったのも、後押しした要因かもしれない。

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ちなみに、俺が明確に非対称型をいちジャンルとして意識したのは、PS3で発売された『EVOLVE』というタイトルだった。もちろん、それまでも非対称型と呼べるゲームは出ていたものの、ジャンルとして確立させるための影響は大きかったように思う。

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『EVOLVE』は、1人のプレイヤーがモンスターとなり、4人のプレイヤーがハンターとしてそのモンスターを狩るために惑星へ降り立つ、というゲームだ。この1対4というバランスは、まさに『EVOLVE』が決定づけたという印象がある。

『EVOLVE』の勝敗は単純で、まさに“狩るか狩られるか”なわけだが、特徴的だったのは時間の経過によってパワーバランスが変わるということだ。

ゲーム開始時はモンスターは脆弱な存在で、ハンターたちと出会うと瞬く間に狩られてしまう。そのためハンターたちから逃げながら獲物となる原生生物を襲って喰い、栄養(経験値)を溜めなければならない。

充分な栄養を得たモンスターは、脱皮して強力な存在へと“進化”していく。ハンター側からすれば、狩猟に時間をかけすぎると、相手がより強力なものへと変貌し、自分たちが狩られるリスクが高まっていくわけだ。

当時の俺は、“時間”という要素を、うまくゲームのシステムとして落とし込んでいたことに、すこぶる感心した。時間と共に有利/不利になっていくというのは、ゲームプレイに緊張感を与えるし、何より“生存競争”という感覚を味わえて、楽しかったのだ。

これもいわば“ごっこ遊び”に属する楽しみかた。世界観に浸る、という意味において、モンスターの摂食、進化、報復という流れを表現していた『EVOLVE』は、俺にとって魅力的だった。

もちろん、登場するモンスターやハンターたちのビジュアルも非常に俺好みだったのも理由ではあるけどね。

なお、“ごっこ遊び”感は、何も強力な側をプレイしたときにだけ感じるものではない。それこそ『Dead by Daylight』で言えば、ホラー映画の登場人物になったように「こんなところに居られるか! 俺は逃げるぜ!」って言って真っ先に死ぬ人のプレイもできるし、『Predator: Hunting Grounds』なら、1作目の映画に登場した人物のように、「いたぞぉぉぉぉぉぉ!」と叫びながらミニガンを乱射するプレイもできる。

映画の『スターシップ・トゥルーパーズ』で紙屑のように死んでいく海兵隊の視点で、絶望感を味わうゲームというのも、それはそれで魅力的に思わないだろうか。

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