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勢力解説:ネクロン/王朝復古を掲げる太古の種族

ウォーハンマー40,000の9版の最初のボックス、インドゥミタスにて、大幅なモデルのリニューアルがされた勢力、ネクロン。

SFスケルトンとも形容できる彼らのミニチュアを見て、ネクロンに興味を持った人に向け、彼らがどんな種族なのかを解説していきたい。

独自の設定のネクロンアーミーを構築するなど、ナラティブ的な遊びかたをする際に参考にして頂ければ幸いだ。

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ナラティブ的な視点でアーミーを作る際、まず考えたいのは、彼らが何のために戦うのか、ということだ。では、ネクロンとはどんな種族なのだろう?

ネクロンの目的を知るには、まずは彼ら自身について知らなければならない。それが、自分のネクロンたちが戦う理由を考える糧となるはずだから。

ネクロンは何を誇り、何を恐れ、何を願ったのか

ネクロンは、最初から今のような機械の体を持つ生命体だったわけではない。もともとはネクロンティールという、生身の肉体を持った知的生命体だった。

しかしネクロンティールの母星は有害な太陽風と放射線にさらされる過酷な環境だったため、彼らは長く生きることは叶わず、それゆえに別の星への生息圏の拡張を夢見た。短命な種族が宇宙へ漕ぎ出す技術力を得るには、民がすべて同じ目的地を見て邁進する団結力が必要だ。そして、ネクロンティールはそれを成した。すなわち、彼らの力とは団結力なのだ。

急速に生息圏を拡大したネクロンティールは、銀河の覇者となる。しかし拡張した生息圏は、ネクロンティールの団結力に影を落とすこととなってしまう。銀河に広く広がった彼らは、すでに団結するに足る“同じ夢”を持たなくなっていたのだ。

この状況を打破するために、ネクロンティールの最高統治機関・トライアークは、一つの結論を出した。……共通の敵を作ること。それが、分離主義になっていたネクロンティールを再び団結させるために導き出した答えだった。

※トライアーク:ネクロンティールの最高統治機関。3人のファエロン(王朝の支配者)によって成り立っている。

その敵として選ばれたのが、最初の知的生命体と言われる<旧き者>である。<旧き者>たちは、銀河を制したネクロンティールにとって、唯一脅威となる生命体だった。しかし理由はそれだけではない。<旧き者>たちは、ネクロンティールが渇望する“不死の秘密”を持つ者たちでもあったのだ。

かくしてネクロンティールは、共通の敵を持ったことによって再び団結する力を得た。……それが不死の秘密という餌によるものだとしても。


しかし彼らの……トライアークの目論見は大きく外れることとなる。<旧き者>たちはネクロンティールらが想定しているよりもはるかに熟達で、ネクロンティールは大敗を喫することになってしまう。

敗北に次ぐ敗北。数世代にも渡る長期的な戦争で負け続けたネクロンティールは、当然ながら内部分裂を起こしていく。

そんな彼らに目を付けたのが、<星界の神々>……ク・タンと呼ばれる超エネルギー生命体だった。ク・タンの先触れとして現れた<欺くもの>は、当時の<沈黙の王>、スザーレクに謁見し、ある提案を持ちかける。

※<沈黙の王>:トライアークの長。つまりネクロンティールという種族において最高位の人物。由来は、<沈黙の王>はほかの2人のトライアークにしか言葉を伝えなかったことによる。

曰く、ク・タンはかつて<旧き者>と戦い敗北した敗残者である。<旧き者>への復讐を成すため、ともに戦ってくれれば、望むものを与えよう、と。

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これは<旧き者>に勝利するすべを失っていたネクロンティールにとって、渡りに船な提案だった。加えて、悲願だった不死の命も叶うというのだ。トライアークによる協議の結果、スザーレクはこの提案を受け入れることになる。

ク・タンが示した不死の実現方法。それは、生ける金属、リヴィングメタルによる躯体へ意識を移し替えることだった。これによりネクロンティールは、寿命だけでなく、不規則に訪れる臓器不全や絶えることのない肉体的な苦痛から解放された新しい存在、ネクロンとなったのだ。

しかし、その代償も大きかった。ク・タンの真の目的はネクロンティールの生命エネルギーであり、それを生体転移によって捨てさせ、取り込む計画だったのだ。

確かにネクロンになることで肉体は頑強に、思考は鮮明になったものの、つねに空虚さを感じるようになってしまう。その体には、魂と呼べるものがなかった。

加えて、リヴィングメタルへの生体転移は階級に応じて区別されており、支配者階級はより精密な転移が行われたため、意識の継続に成功しているが、一般的な市民階級は自我を失う者がほとんどだった。

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さらに各ネクロンには生体転移の折に、コマンド・プロトコルと呼ばれるコントロール機能が組み込まれていた。すなわち絶対服従を可能とする統制機能であり、コマンド・プロトコルと自我の喪失により、完全統制された軍勢ができることとなる。

スザーレクは己の民に降りかかった呪いを見て苦しんだが、これによって彼を含むトライアークが望んだ“不死の身体”と“種族の団結”が叶ったのは大きな皮肉だろう。

しかしスザーレクは、この状況を最大限に利用した。ネクロンティールの生命エネルギーを吸って強大になったク・タンと、統制されたネクロン軍は、ついに<旧き者>を滅亡へと追いやることに成功する。

そしてスザーレクは、その戦いで疲弊したところを狙い、ク・タンへの反乱を起こしたのだ。コマンド・プロトコルがある以上、反対するものなどいるはずもない。ネクロンが秘密裏に用意していた超兵器によって、ク・タンは粉々に打ち砕かれ、その欠片は四次元立方体へと封じ込められることになる。

こうしてネクロンの敵はすべていなくなったかに思われた。しかし、ネクロンもまた、<旧き者>とク・タンとの連戦で大きく消耗しており、<旧き者>の陣営で戦っていた種族……アエルダリと戦うだけの力が残っていなかった。

そのためスザーレクは、ある勅令を民へと下す。「全ネクロンはこれより六千万年の眠りに就くべし。我らはしかる後に再び目覚め、かつて失われた物全てを再建し、諸王朝の栄光を取り戻すであろう」と。そしてこの命令を最後に、スザーレクはコマンド・プロトコルを破壊し、銀河の果てへて消えていく。

スザーレクはコマンド・プロトコルの有用性は認めつつも、(己も知らなかったとはいえ)民を騙すような形で不死性と団結力を手に入れたこと、それによって自らの肩にネクロンのすべてがかかっていたことを重責に感じていたようだ。

それから永い時が流れ、現在銀河のいたるところでは、墳墓惑星(トゥーム・ワールド)に眠るネクロン王朝が目覚め始めている。目覚めの時期にバラつきがあるのは、墳墓惑星の機能不全の結果だ。他の追随を許さないネクロンの科学技術でさえ、六千万年もの期間を無傷でやり過ごすことはできなかったのだ。

目覚められただけ幸運なほうで、不運な事故によって惑星ごと消滅したり、機能を停止した墳墓惑星も珍しくはない。

予定よりも遥かに早い目覚めとなったとはいえ、ひとたび目覚めたネクロンたちは、王朝を率いるファエロンの意志に従い行動を起こしていく。コマンド・プロトコルの破壊により、彼らの意識に新たな命令がインストールされることはなくなったが、最後の命令は未だ生きている。すなわち、この銀河を再征服し、ネクロン王朝の栄光を知らしめることだ。

これが、ネクロンたちが持つ根源的な戦う理由である。自らの文明に対する誇りと銀河を統べるに足る存在であるという自負。そしてそれ以上に、王朝復古すべしという呪いが、彼らを突き動かしている。

そして今、かの<沈黙の王>が遥か永き旅路から帰還した――。スザーレクは銀河を旅するなかで、ティラニッドの存在を目にした。ティラニッドによってあらゆる有機物が貪り喰われてしまえば、民を反生体転移によって戻す望みが絶たれてしまう。種族の危機を察知したスザーレクは、銀河系に戻り、民たちを再び導くことを決意したのだった。

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すべては、王朝復古のために

ネクロンの過去を紐解くことによってわかるのは、彼らは銀河は自分たちのものであるという認識を持っていることだ。現に彼らは一度銀河を統べており、その超技術は現在においても見劣りするどころか、超越していると言えるほどだ。

彼らの視点で物を見れば、休眠が必要だったので庭の手入れが行き届かなかったが、目覚めた以上は雑草や虫が巣くっている庭を掃除しなければならない。そのくらいの意識だろう。多くのネクロンにとって、文明と呼べるものを持つのは宿敵たるアエルダリ程度のものである。

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銀河の再征服という目標は、コマンド・プロトコルによってネクロンの精神に深く刻まれた呪いのようなものだ。すべてのネクロンは基本的にこの思想から逃れられないと言っていい。

しかし、ナラティブ的な視点で言えば例外も作りようはある。ネクロンは永き眠りの影響で、まともな状態で自己保存できている存在のほうが少ない。つまり、精神に何らかの異常をきたしている。

それでも墳墓惑星の機能が十全であれば、時間をかけることで自動的に復旧されるようだが、それができる墳墓惑星がどれほど残っているだろうか。ましてや、正常な機能を失い、自我を失ったネクロンたちがうごめく場所……断絶惑星(セヴァード・ワールド)も数多く存在する。

加えて、民を導くべき存在である<沈黙の王>やトライアークが失われていることも、ネクロンの行動の一貫性のなさに拍車をかけている。

コマンド・プロトコルによって書き加えられた命令は、ただネクロン王朝を再興させること一点のみである。ゆえに、目覚めたファエロンやオーヴァーロードたちは、自らの行える手段、自らの理念に則して王朝の復権を成し遂げようとしている。

つまり、軍団の行動指針を考えるにあたり、大本の設定を重視したとしても、制限はそれほど多くないのだ。目的は王朝の復興。それをどのように成すかは、あなたの作ったロードしだいなのだから。

仮にスザーレクが帰還しても、コマンド・プロトコルがすでに破壊されている以上、命令に背くこともできるのかもしれない。それが本人の“ネクロン王朝復興”の障害となるのならば……。


押さえておくと背景設定に役立つかもしれない知識

●<沈黙の王>は全ネクロンにおいてただ一人
<沈黙の王>とは、種族を代表する指導者的存在。最後の<沈黙の王>スザーレクは存命中だが、銀河の果てに旅立っており、現在<沈黙の王>は空位に等しい扱いとなっていた。しかし今(9版)、<沈黙の王>は再び銀河系へと姿を現すことになる。

●現状のトライアーク
スザーレクを除くトライアークは、<旧き者>やク・タンとの戦いで死亡しており、その後も後継者を指名していないため、長らく空位だった。永き時が過ぎたせいで、ネクロン内でもトライアークという存在そのものが過去のものとして認識されつつあったが、帰還したスザーレクが<輝ける>ハプタットラと<影なる手>メソフェットを昇格させたことで、新たなトライアークが誕生した。

スザーレクと彼の両脇に控える2人を含めた3人が、現在のトライアーク

●ネクロン王朝を収めている人物はファエロンと呼ばれる
無数にあるネクロン王朝のトップに立つ者がファエロン。貴族の最高位であり、その下に数人のオーヴァーロードが続く。ミニチュアとして存在するオーヴァーロードはこの位階。

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●ネクロンは階級によって自意識の保持加減が異なる
生体転移の際、民の階級によってあてがわれる躯体の性能は異なっていた。これは支配者階級と被支配者階級との差別的な意味もあったが、単純に全臣民に性能の良い躯体を用意するだけの資源が残されていなかったことにもよる。

ネクロンウォーリアのような下位の躯体には個人レベルの意識はなく、上位の存在による命令がなければ動くこともままならない傀儡のような存在である。が、まったく意識がないかというとそうではなく、ときたま過去の残響のようなものが表面化することもあるだけに悲惨である。なお、イモータルのような戦士階級には、役割に応じて必要部分だけの自意識が残されている。

●胸にある記号文字は、全王朝で共通のトライアークの意匠
ほぼすべてのネクロンが胸の中央部にほどこしている記号文字(グリフ)は、古のネクロンティール諸王朝の“トライアークのアンク十字”であり、所属する王朝のものではない。

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尊大極まる一部の貴族たちは、トライアークのアンク十字の代わりに自らの王朝の記号文字を入れたようだが、基本的には不敬な行為にあたる。

これとは別に、各王朝は独自の記号文字を所持しており、自らの権威を示すために武器やマントなどに意匠をほどこす。位が高いほど完全な記号文字を刻むことができ、下級になるほど簡略化された意匠になっていく。

また、所属王朝が滅亡していたり、過去に罪を犯して権力を剥奪された者は、記号文字を削り取られている場合もある。

権威を示すためのものなので、モノリスやドゥームズデイ・アークなどの強力な兵器ほど記号文字が記されていることが多く、逆に使い捨ての兵士として見られるネクロン・ウォーリアなどには記されていないことも珍しくない。

●ネクロンが機能停止した場合は、フェイズアウト現象によって転送される
ネクロンは多少の損傷であれば、時間をかけてその場で再生を行える。しかしそれが不可能な状態まで破壊されると、自動作動式のテレポートビームによって瞬時に転送されるフェイズアウト現象が起こり、拠点で修理されることになる。

万が一転送ができなかった場合は自爆装置が作動し、緑色の炎に包まれたかと思うと、リヴィングメタルの躯体はたちまち消滅してしまう。これは拿捕されて研究されることを防ぐための処置である。なお、見た目的にはフェイズアウトとよく似ているため、判別が困難とのこと。

●デストロイヤーとフレイドワンは、大きく理性を損なっている
多かれ少なかれ、ネクロンは永き眠りによって精神に障害を抱えている者が多い。その中でもデストロイヤーとフレイドワンは特殊な存在といえる。

デストロイヤーは、魂を失ったことに怒り、絶望し、存在意義のすべてを殺戮へと向けた存在だ。一種の自暴自棄のような状態ともいえ、通常のネクロンが血肉を羨んで人の頃の姿を留めたがるのに対し、デストロイヤーはより効率的に敵を殺すことに特化した体へと改造することもいとわない。

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フレイドワンは逆に、純然たるウイルスによって生まれる個体だ。ク・タンの一柱<皮剥ぐもの>が消滅間際にもたらした呪いは、永きに渡りネクロンを蝕んでいる。フレイドワンウイルスに侵された者は、だんだんと生物の血や肉、皮などに執着を見せるようになる。最終的には自我を失い、死体を貪る化け物へと変貌してしまう。

当然ながら、この狂気的な行動は他のネクロンに忌避され、感染する可能性もあることから、感染の疑いがでた者は即座に追放されたり、破壊されたりする。

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●トライアーク・プレトリアンはファエロンの指揮外にいる
トライアーク・プレトリアンは、栄華を誇ったかつてのネクロン王朝における、トライアークの支配体制の番人を司る存在だ。トライアークの敷いた法を順守させることこそ、彼らの使命である。

ゆえに新たに目覚めたロードたち、ファエロンでさえも、トライアーク・プレトリアンの監視対象であり、古い法令に背いていないかを常に見張っているのだ。

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●バラバラに引き裂かれたク・タンたちは、ネクロンに使役されている
ネクロンに裏切られ、バラバラの破片と化してしまったク・タンたち。しかし彼らは破片の状態でも強大なエネルギーを有しており、現在ではネクロンに自由を奪われ、エネルギー源や兵器として活用されている。しかしク・タンとしての意志も残っているため、万が一解き放たれることがあれば、その力はネクロンにも向けられるだろう。

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こういったネクロンたちの考え方、物事の捉え方を知ることで、自分のネクロンアーミーに深みを持たせることができるかもしれない。

もちろん、ただゲームを遊ぶだけであれば何の意味もない情報に過ぎないが、ウォーハンマーの物語はそれだけで夢中になれるほどの魅力がある。

これを読むことで、もっとウォーハンマーの世界に興味を持ってもらえれば幸いだ。

なお、ネクロンの設定に関しては公式の書籍であるコデックスを読むのが一番だ。より深いユニットごとの解説などを知りたい場合は、ぜひコデックスを入手して読んでみてほしい。

最後に、今回に限らず記事は全体的に調べながら書いているが、なにぶん細かい設定の変更が多いウォーハンマーである。自分で調べた内容が古く、間違った記載をしていることも考えられる。そういった情報を見つけたらぜひコメントなりTwitterのDMなりで教えて頂きたい。


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