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世界観を壊さずに独自設定を作りたい:WH40k編

アーミーやゲームにナラティブ性を与えるにあたって、基礎となるのは大本の世界観への理解度だ。

もちろん、好き勝手に想像してもいいのだけど、それだとこの記事で何も書くことがなくなるし、俺は基本的な設定の上に成り立つ独自設定という塩梅が好きなので、この記事はそういった視点で書かせてほしい。

例えば「ウルトラマリーンのオリジナルチャプターマスターを考えたぜ!」っていうのも自由だけど、公式でウルトラマリーンの戦団長としてはマルネウス・カルガーという人物がすでに存在するわけで、俺が何か独自要素を入れたウルトラマリーンを作るとしても、そこは変えたくない、ということ。

なんだかんだ言っても公式の設定っていうのは強くて、仮に俺のオリジナル戦団長を作ったとしても、みんなの中ではウルトラマリーンの戦団長はマルネウス・カルガーである事実には変わりない。

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でも完全にオリジナル戦団とかであれば、まだ自分のキャラクターが誰かの記憶に残るかもしれない。

そういうこともあって、個人的にはすでに設定があるもの対して独自設定をかぶせるのは避けている。……まぁ単純に原作の世界設定が好きなので、そこを大事にしたいという思いもあるのだけど。

しかしビデオゲームなどの半公式媒体で“被せ”をやったものもあるから、結局は好みでしかないということは念を押しておく。パラレルワールドなんぞ無限に生み出せるのだ。なんなら“歪み”を通ったパラレルワールドのウルトラマリーンがワープアウトしてきて、原作世界のウルトラマリーンと戦ったっていいんだし。

とはいえナラティブを考えるにしても、世界設定を知らないと想像も難しい。まぁウォーハンマーにハマり、かつナラティブ妄想垂れ流し記事を見に来ている人たちには今更必要ないかもしれなが、今後来たる新たな同志に向けて、簡単に紹介していこう。


戦争のみが残った世界

ウォーハンマー40,000の公式メディアでは、よく「THERE IS ONLY WAR(そこには戦争だけが残った)」というフレーズが出てくる。

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人類を始め、どの種族もただ闘争でしか自分たちの存在を維持できない。そんな世界であることを表した言葉だ。

基本的にこの世界は、他者への歩み寄りや相互理解といった感覚を有していない(個人単位として持っている人はいる)。偏見や対立、禍根や利己性にまみれた世界だ。

皇帝の威光のもと、銀河を征服しようとする帝国
帝国から離反し、自らの欲望に従うケイオス・スペースマリーン
暗黒の神々の思惑に従い、物質世界に侵攻するディーモン
斜陽を迎えた自種族を生き延びさせるため、策謀を巡らせるアエルダリ
悦楽に興じ、他者を玩具としてしかみなさないデュカーリ
永き眠りから目覚め、銀河の再征服に乗り出すネクロン
戦うことにのみ生を見出すオルク
大善大同という教えの名のもとに統一を図るタウ・エンパイア
すべてを食らい尽くす侵略者ティラニッド

細分化すればもっと多くの勢力がいるが、どの種族であれ自分たちの思惑・欲望によって活動しており、一勢力として“手を携える平和な世界”を望んではいない。

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話し合いができ、共闘することもある勢力はいるものの、そこには打算が含まれていたり、やむなき共闘ということも珍しくはない。比較的話が通じる(とみなされる)アエルダリやタウでさえ、“他種族を下に見た”うえでの交渉ごとであり、そこに平等意識などはない。ディストピアやポストアポカリプスで描かれるような社会風刺的な魅力が、ウォーハンマー40,000にも適用されている。

なお、ウォーハンマー40,000の詳細な世界設定については膨大な分量になるため、今回は割愛。ひとまず、いろんな種族が互いの大事な物のために戦争し合っている世界と覚えておけばいい。

最近は拡張本の発売に応じて作中の物語が進むことが多く、昨今の大きなできごとと言えば、アバドンという名のケイオス・スペースマリーンの首魁によって引き起こされた大戦によって、巨大な次元の裂け目が発生。帝国領が分断されてしまったことが挙げられる。

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この裂け目は閉じることなく、今でも物質世界の通行や通信の妨げとなっており、数少ない回廊を除けば通行すらままならない状況になっている。(銀河英雄伝説を知っている人向けに言えば、イゼルローン回廊)

今は拡張本「サイキック・アウェイクニング」の登場により、さらに物語は進み、9版の登場も目前に迫っている激動の時代だ。次版は日本語版のコアブックも出るかもしれないとのことで、世界設定を追いたい人は注目しておこう。


オリジナル設定の考え方、その一例

さて、世界観の基礎部分を知ったうえで、自分のアーミーにナラティブを組み込んでみよう。まずは、自分のアーミーが、その勢力で正統なのか、異端なのかを考えてみてはどうだろうか。

まず、上で挙げた各勢力の立ち位置を、話し合いができるか、できないかという2つに分けてみよう。

【話し合いができる】
●帝国
●アエルダリ
●ネクロン
●タウ・エンパイア

【話し合いができない】
●ケイオス・スペースマリーン
●ディーモン
●デュカーリ
●オルク
●ティラニッド

俺個人の主観だと、こんな感じだ。デュカーリはやや悩んだところ。打算的な協力はできるはずだが、彼らのアイデンティティとして“略奪”があると思うので、基本的にはできない側に入れている。アエルダリとの対比にもなるしね。

一応言っておくと、自分なりにその勢力がどんな立ち位置なのかを判断するための例なので、この区分け自体は重要じゃない。

“話し合いができる”側は、共闘をつねに望んでいるわけではないが、目的のためならば別の勢力を利用することを是とできる勢力だ。ここにおける正統とは、自分の主張を曲げてでも、勢力のために敵と手を取り合うことができること、としてみよう。

この場合の異端とは、自分の信条・心理的制約により、己を曲げることを是としない。他種族など絶対に信用しないことになる

“話し合いができない”側はイメージそのまま、正統は自分たちの価値観に従い他勢力を排除することであり、異端は何らかの理由があれば他勢力と共闘をすることだ。

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今回のはあくまでも一例だが、その勢力にとって何が普通とみなされているかを考えることには、独自設定を立ち上げる際に役に立つ。

自分のアーミーの指揮官は正統と異端、どちらの思想の持主なのか。正統派であれば、模範的なキャラクターとして、より強固に世界設定に馴染ませやすい。異端派であれば、正統派的思考とのギャップが、よりそのキャラクターの魅力を際立たせるはずだ。

例えば、帝国と取引をするオルクは実際に存在する。オルクという種族自体は生まれてから死ぬまで戦うことしか考えていないような種族だが、その中にも人間と取引してガッポリ儲けることを良しとする異端がいるのだ。

そういうキャラクターはやはりインパクトが強く、印象に残りやすい。設定を考えるのも楽しいだろう。

では逆に正統はナラティブ的につまらないのか、という話になるが、俺はそうとも思わない。正統は正統で、いろいろロマンが溢れている。

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スペースマリーンで例えよう。模範的なウルトラマリーンの後継戦団を作るとする。彼らはまさに人類の守護者たる戦闘者らしく、人類のために戦場を駆け巡っている。この時点で、ウォーハンマー40,000の世界観との親和性がかなり高い。いわゆる“実際にいそう”感が出せるわけだ。この感覚が正統派の強みであり、魅力であると思う。

そのうえで、独自の解釈を考えていくのだ。密林の惑星を主戦場にしているため、アーマーの色を迷彩にした、とかでもいいし、都市部への攻撃を得意としており、肉弾戦装備を多く携帯する傾向がある、とかでもいい。

いっそのこと正統的なパーソナリティをさらに強化するのもありだろう。戦団長は過去のある体験により、人類を救うためならどんな犠牲をもいとわないと考えるようになった、とか。

個人的には、オリジナリティを出しつつ世界観に馴染ませるには、多くの正統設定の中にひとさじの異端、というバランスがちょうどいいように思う。あまりオリジナリティで固めすぎると、どうしても浮いてしまう部分が出てくるように感じているからだ。

もちろんこれは好みの話で、ウォーハンマーの40,000の世界は広く、どんな設定のアーミーでも絶対にいないとは言い切れない。好きに作ってくれて構わないというのが公式のスタンスでもあるしね。

とりあえず言いたいのは、自分のアーミーの設定を考えて、世界観に馴染ませる作業は楽しいよ、ということ。ぜひ自分のアーミーの設定を考えてみて欲しい。

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