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歌詞至上主義者、インストバンドのライブに行く~音の点滴SPECIAL OTHERS~

音楽を聴く時、歌詞を傾聴せずにはいられない。歌詞そのものであったり、雰囲気であったり、韻の踏み方や言葉とメロディーの重なり具合であったり。

おそらくはじめて好きになった音楽がMr.Childrenだったせいだ。生きるためのレシピなんかないせい、自分らしさの檻の中でもがいているせい、矛盾し合ったいくつものことが正しさを主張しているせいだ。いや、そのピアスのせいなのかな?

三つ子の魂百までというが、中学の音楽嗜好三十路まで。今でも私の音楽脳における歌詞比重は人よりも大きく、もはやきゃりーぱみゅぱみゅの歌詞で泣けるくらいまでに感覚が研ぎ澄まされている(特にファッションモンスターとふりそでーしょんが良い)。寝ても覚めても歌詞がいい歌詞が泣けると大騒ぎしている歌詞至上主義者こと私である。

そんな私がインストバンドであるSPECIAL OTHERSのライブに行ったのは先週のことだ。

SPECIAL OTHERS、縮めてスペアザ。

インストゥルメンタル、縮めてインスト。

インストバンドにはボーカルがいない。よって歌もない。だが、アジカンのコンピレーションアルバムで初めてスペアザを聴いた時「楽器が歌っている!」と思った。リコーダーの授業で音楽の先生が「歌うように~」言っていた意味を10年越しで理解した瞬間だった。

というわけで元からスペアザは好きだったのだが、歌なしのライブを2時間3時間飽きずに聴き続ける自信がなくてライブに行ったことがなかった。曲も有名どころしか知らないので、少し不安だった。

しかし結果、そんな心配は無用であった。めちゃくちゃ楽しめた。

まず誤解を恐れず言うと、ちゃんと聴かなくていいのが新鮮だった。

普段ライブに行くときは、かなり能動的な「聴く」をやっていた。ギンギンの目をステージに向けて、全ての音、全ての言葉を根こそぎ脳に焼き付けようとしていた。しかし、これにはかなりの集中力が必要だ。ライブが終わる頃には満身創痍、へろへろ状態だ。まあそれはそれで楽しいのだが。

しかし、歌がない。言葉がない。演奏のみ。するとどうだろう、いつもの緊張感から解き放たれ、非常にリラックスしてステージを見ている自分がいた。

リラックスするとどうなるのかと言うと、時折全然関係ないことを考えていたりする。帰りに何食べようとか。もしくは何にも考えずぼけ~っとしていたりする。そんな中で、頭では聴いていなくても体がちゃんと音を聴いていて、リズムをとったりユラユラしていたりする。その状態が何とも心地良いのだ。もう点滴みたいなもん。勝手に入ってくる、間違いなく体にいいものが。

そして、やはりライブじゃなきゃ味わえないものがある。それはインストでも同じなのだと実感した。音源で聴いてた以上の高揚感だった。

ゆったりとした雰囲気の曲が、爽やかさを保ちつつ次々と変調して盛り上がっていったり、サビに大サビ的なのが乗っかって、それで終わるのかと思いきやまたサビでみたいのを繰り返したり、そこから更に大大大サビみたいのが来たり。予想を超えてくる。自由に、無遠慮に畳みかけてくる。スマートかと思いきやオラオラ。俺について来れんのか?的な。こうして欲しいんだろ?的な。ちょっともうヤバいくらい上がる。ノらずにはいられない。

これをもし歌モノでやったら絶対しつこい。タガタメの大サビが3回4回繰り返されたらさすがの私も落ち着いてとりあえず一回サッカーしよって言う。歌がない分、大胆に変調を展開したり、盛り上がるところでこれでもかと盛り上げたり、楽曲の自由度が高いのがインストの強みなのかなと思った。曲を知ってるとか知らないとかもうあんまり関係なかった。メロディーが多彩で全く飽きない。

あと、スタイリッシュなイメージに反してMCがめちゃくちゃ面白い。めっちゃ喋る。音楽とトークのギャップが高嶋ちさ子並み。仲が良いのが伝わってくるし、メンバーそれぞれの人柄もよくわかり、初めてライブに行ったとは思えない程に親近感を持ってしまった。ドラムの人がモンゴル人っぽいって話あと2時間は聞けた。

ベースの人はMCで全く喋らず、話を振られることもなく、なんなら弾いてる時もライト当たってないんじゃないかってくらい存在がよく見えなかったのだが、最後の曲の後一人残っておもむろにマイクを握り、唐突なオンステージの後に去って行った。摩訶不思議すぎて最終的に一番好きになった。

そんなこんなで2時間たっぷり満喫し、帰るときにはなんだか健康になった気さえした。まさに点滴。元気に酒飲んで帰った。二軒行った。私はインストのライブも楽しめる人間であることがわかった。人生に楽しいことがまた一つ増えた。

インストを聴いたことがない、ライブに行ったことがないという人がいたら、まずはSPECIAL OTHERSを聴いてみてほしい。そしてライブに行ってみてほしい。音の点滴がきっとあなたの心を健康にしてくれるはずだ。


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