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【Night Clan #2】対策!定石の先を行け

はじめに

 ²№(にの、@2no_38b )と申します。ボードゲーム制作チーム Miyabi Lab(@38b_lab )でゲームデザインを担当しています。本記事はボードゲーム『Night Clan(ナイトクラン)』のプレイ考察記事です。

 前回です。考察の結果《9点配置》定石を提案しています。本記事はこれを実践した結果と、新たに生まれたメタゲームの研究を進めます。前回と同様、4人プレイを前提として記述します。
 本記事にも《9点配置》の基本説明は記述しますが、より詳しい考察に興味のある方はどうぞ。

 Domina Games(ドミナゲームズ)公式のゲーム情報です。

本記事では、カード名は【】で、非公式用語・戦術は《》で表記します。
前回よりは読みやすくなってる…はず…。


1.《9点配置》とは?

1位は8点以上欲しい

 Night Clanの最大勝利点は12点です。

プラス: 【娘】(+1)*7枚、【財宝】(+2)*2枚、【宿り木】(+1)*1枚
マイナス:【夜警】(-1)*2枚、【トロール】(-2)*1枚

 初回プレイの5回では、1位の最低勝利点は8点でした。8点以上獲得するには、基本的に「【娘】【財宝】【宿り木】で10点以上獲得しつつ、自分の【トロール】を獲得しない最終配置」が必要となります。

安全に9点獲得する

 勝利点の基準を8点に設定した結果、自分の勝利点が9点以上であれば比較的安定して1位を狙えると考え、提案した最終配置が《9点配置》です。【娘】6枚、【財宝】2枚、【夜警】1枚(【宿り木】【夜警】セット)の内訳で勝利点を9点獲得することを最大の目標として進行します。

5A 【娘】【娘】 +2
5B 【財宝】 +2
6A 【財宝】【夜警】 +1
6B 【娘】【トロール】(相手【宿り木】なし) 0
7A 【娘】【娘】 +2
7B 【娘】 +1
8A 【宿り木】【夜警】(相手【トロール】あり) 0
8B 【娘】 +1

 《9点配置》の一例です。以下のテクニックを使用しています。より詳細な立ち回り、解説は前回参照。

  • 定員5枚の場所《5場所》に【娘】2枚、裏向きカード1枚を配置する

  • 【トロール】を【娘】と同じ場所に配置する

  • 相手の裏向きカードが集中する場所に【宿り木】【夜警】を配置する

 《9点配置》の特徴は、「相手の勝利点を妨げる意図はほとんどなく、自分の勝利点を安定して獲得する狙い」であることです。4人プレイでは、相手1人を狙って勝利点を妨害しても、自分の勝利点が低い状態では1位を狙うことは難しいといえます。よって、この戦略が有効であると考えました。

そもそも、ビタ読みを当てて最高点を狙う配置はハイリスクであり、人読みの要素が大きすぎるので定石にしにくい。

2.実践してみた!

 前回で6000字も考察しておいてアレなのですが、《9点配置》を準備した上でのプレイ前の心境は「実際4人いたら盤面ぐちゃぐちゃになって全然上手くいかないやろなあ」でした。各プレイヤーが手を進める上で、お互いの介入が非常に大きいことがNight Clanの特徴であるからです。

思ったより通用する

 3回プレイしてすべて2位という結果になりました。

  1.  9点(1位:11点)

  2.  7点(1位:8点)

  3.  7点(1位:8点)

 残念ながら1位になることはできませんでしたが、前回では5回プレイして3回ビリだったことを考えると、ある程度の効果があったといえるのではないでしょうか。3回すべてで《9点配置》の思考をベースに進行したのですが、どれも大きく失点することなく、安定した勝利点に落ち着いています。読み合いよりもリソース管理に比重を置いた、安定性を重視した戦略の結果が見て取れます。

【トロール】を獲得しなかった

 相手の勝利点が集中する場所に【トロール】を配置すれば、その分【宿り木】のリスクは高まります。《9点配置》ではそのようなハイリスクな【トロール】は避け、自分の【娘】を巻き込んで配置することで、確実に【トロール】の破壊を成功させることを重視します。これが上手く決まり、3回のプレイで1回も自分の【トロール】は妨害されませんでした。-2点を獲得しないことで勝利点が常に高い水準に落ち着き、2位に繋がったと考えます。

【夜警】で《追い出し》た

 自分のカードの《引き寄せ》と相手のカードの《追い出し》の2つどちらかを使用できる【夜警】ですが、今回のプレイでは基本的に《追い出し》で使用しました。序中盤から《9点配置》の完成に向けて、終盤《引き寄せ》がなるべく必要とならないよう丁寧に進行したことで、【夜警】を《追い出し》による妨害、または相手の【夜警】へのカウンターとして使用する余裕が生まれました。
 《追い出し》で相手の裏向きカードを1つの場所に集中させる動きは非常に強力でした。その中に【トロール】が含まれているプレイヤーは【宿り木】のリスクが高まりますし、【財宝】【トロール】となっているプレイヤーはどちらかを《引き寄せ》るしかなくなります。他のプレイヤー同士で【夜警】を使いあってもらい、自分は手を進めるといった状況は、《9点配置》の序盤からのリソース管理の強みが出たと考えます。

《5場所》管理が成功した

 埋めやすく、【娘】による勝利点を比較的獲得しやすい《5場所》。これを1ターンで埋められないように空き3枚で配置する《3止め》が今回も見られました。それに対して安易に【娘】で返すのではなく、裏向きカード1枚を配置してリスクを付けたことが上手くいきました。

  • 【トロール】を配置して《3止め》を崩し、【娘】2枚での埋めを釣り出して、破壊を成功させる。

  • 【財宝】を配置して《3止め》を崩し、他のプレイヤーに埋めてもらい、安全に2点獲得する。

 上記を含め、《5場所》の駆け引きで有利に立ち回ることができました。【夜警】の項でも振り返りましたが、全体として「自分は安全な場所で手を進め、裏向きカードや【夜警】を先に配置して危険な場所を作り、相手に対応を迫る」大局が機能していたように感じます。

3.でも1位じゃないじゃん

 ウッ

2位じゃダメなんですか

 用意してきた《9点配置》は一定機能したけど、1位になることはできませんでした。何故なのか。1位が上振れたから仕方ない?絶対わからん【トロール】食らったから仕方ない?そういう考え方もあるでしょう。
 大局の視点から見てみると、《9点配置》に向けた現状の進行は、「1位を狙う」というよりも「上位に入る勝利点を獲得することにフォーカスする」ことが本題です。つまり、「俺は自分のできることしたから、あわよくば1位になってろ」という戦略です。その結果が今回の順位なのだと思います。

止めてないから上振れる

 3回のプレイすべてで、自分の【トロール】の破壊を成功させました。しかし、そこで奪った勝利点の多くは1位のものではありません(または、そもそも奪った勝利点が少ない)。その結果、1試合目ではパーフェクトに近い11点が出てしまいました。配置が良い形で進んでいるプレイヤーを放置して自分の手を進めることに集中しているだけでは、この結果を変えることはできません。
 つまり、1試合目では「俺は自分のできることしたから、あわよくば1位になってろ」の「あわよくば1位になってろ」が成立しないプレイであったことがわかります。

《9点配置》なのに9点ねーじゃん!

 2・3試合目では、終盤の【夜警】が上手く配置できず、【宿り木】も獲得できなかったことで、勝利点が7点しか獲得できませんでした。この2回はどちらも1位の勝利点が8点であったことから、狙い通り《9点配置》が完成していれば1位を狙えました。読み合いを警戒するあまり、勝てない最終配置を目指してしまったミスです。
 つまり、2・3試合目では「俺は自分のできることしたから、あわよくば1位になってろ」の「俺は自分のできることしたから」が成立しないプレイであったことがわかります。

4.《9点配置》まとめ

マクロは正しい1つの指標

  • 序盤から最終配置に向けて配置する

  • 【トロール】【財宝】を安全に消化する

  • 【夜警】を【宿り木】と配置するか《追い出し》で使う

 以上のベースとなる大局部分はかなり通用しました。リソース管理の観点で整理したことによって、読み合いになる場所、考えるべきことが絞られ、初回に比べてプレイしやすかったと感じます。

プレイヤーのミクロ不足

  • 配置が良い(高い勝利点が見込める)プレイヤーを妨害に巻き込む

  • 自分の勝利点が9点になるよう完遂する

 これらの判断が求められる技術部分はまだまだ改善の余地がありました。更なる上達には、戦略の中で【夜警】を配置するタイミングでリードしているプレイヤーを見極めるなどの新たな観点・評価も必要であると感じます。

5.定石は新たな定石へ

《5トロール》は流行る

 定石が(少なくとも一緒にプレイする4人の中では)なかったゲームを考察し、新たに戦略を提案するとどうなるか。

定石→対策→対策が流行→対策の対策→流行→対策の対策の対策→…→定石

 この変遷がメタゲームの基本です。今回チームメンバーとプレイしたNight Clanでは、《9点配置》と《5場所》の駆け引きが最初の定石となりました。特に、《5場所》に裏向きカード【財宝】【トロール】を1枚配置し、他のプレイヤーの【娘】配置に対してリターンを得る動きは強力で、3回のプレイすべてで機能していました。
 《5場所》は狭く、【宿り木】とともに【娘】【財宝】を配置する余裕はほとんどのプレイヤーにとってありません。よって比較的安全に【トロール】を配置しやすいといえます。今後、《5場所》に【トロール】を配置する《5トロール》は、安易な【娘】での得点を牽制する、新たな1つの定石となる予感です。

《5宿り木》は流行らない

 《5トロール》が流行となれば、当然その対策が出てきます。最も簡単なのは《5場所》に【宿り木】を配置することなのですが、これは正直流行しないと考えています。
 上記の通り、《5場所》に【宿り木】を配置したプレイヤーがその場所に他の勝利点を合わせて配置することは定員的に難しく、仮に【娘】【財宝】で埋められてしまった場合は【宿り木】は破壊され、勝利点を失うことになります。リターンに対してリスクが大きく、あまり取りたくない行動です。

じゃあ《5トロール》は絶対最強なのか。もちろんそんなことはないので、Night Clanプレイヤーは是非考えてみてください。戦略を考え定石を生む。定石に打ち勝つ。メタゲーム楽しい!マクロ研究最高!

おわりに

 初回プレイとはまったく異なるゲーム体験をすることができました。全体としてプレイの質が上がっているのを感じましたし、考察した戦略の成功した部分と、課題が見えました。前述した《5トロール》の1つ先がどうなるかは、思いついてはいるのですが、次回プレイまで伏せておこうと思います。次のプレイも楽しみです。

「1回遊び終えたゲームを研究し直して新たなプレイスタイルが生まれ、メタゲームが発展する」一連の流れは、対戦ゲームを遊ぶ上でグッと楽しくなる取り組み方の1つだと思います。
もし興味を持ってくれた方は、Night Clanに限らず、様々なボードゲームで実践して欲しいです!

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