見出し画像

Manic Street Preachers / The Holy Bible (1994)

1〜2作目を通して失敗と成功の両方を経験したマニック・ストリート・プリーチャーズのサード・アルバムは、リッチー・エドワーズ失踪前、オリジナル・メンバー4人での最後の作品。

今回もまた賛否両論激しく、同時に彼らを代表するアルバムにもなった本作は、その陰鬱で重苦しい詞がぎっしり詰まった内容から「NMEが選ぶ最も暗いアルバム50」の1位に選出されるほどの問題作となった。

狂気の淵に迫り自らを深く傷つけるようなヘヴィでダークなリッチーの詞と、強烈な政治的主張や風刺を含んだニッキー・ワイアーの詞は、生ぬるい表現を駆逐して尖りに尖っている。
それがジェームス・ディーン・ブラッドフィールドとショーン・ムーアによるポップでパワフルなメロディと逞しいバンド・サウンド、そしてジェームスの突き抜けたトーンのヴォーカルに載り、言葉と音の間の違和感もろとも吹き飛ばすようなエネルギーが随所に込められている。

また、過去2作のメタリックなサウンドから、デビュー当初のパンク〜ポスト・パンク寄りのスタイルに回帰したような音楽性も本作の特徴。

英国内がブリットポップに熱狂し浮かれている最中、この”ウェールズの雄”は、全く別次元で自らを抉るように内省的なアルバムを作り上げたわけだから、敬遠されるのも仕方がない。
しかし、この"聖書"はマニックスのキャリアの中で重要な位置を占める作品でもあり、一聴の価値があることは間違いない。





リリースから30年経った今でも、強烈な死の匂いを漂わせるマニックスの3作目。
ヒップホップ並みにぎっしり書き込まれた詞には政治家も過激派も犯罪者も実名を挙げて書かれ、それは激烈なアジテーションのようでもあるし、筆圧強く書き残された遺書のようでもある。
その陰惨な言葉と張り詰めた音が、13曲56分のアルバム全体に敷き詰められている様に、開いた口が塞がらない。あるいは閉口してしまう。
でもそれを力技でアンセムっぽく持っていけるジェームスのフロントマン/メロディ・メイカーとしての力量も凄い。パワフルさと哀愁が同居したエネルギッシュなヴォーカルは意外と唯一無二なのかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?