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The Cars / The Cars (1978)

リック・オケイセック(Vo/G)とベン・オール(Vo/B)を中心にボストンで結成された5人組ニューウェイヴ・バンド、ザ・カーズのファースト・アルバム。

リックが書くポップでヴィヴィッドな楽曲に、ニューウェイヴ的なリックとアメリカン・ロック的なベンのツイン・ヴォーカルがそれぞれ入る。
サウンドは音圧強めで、クイーンも手掛けたロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースしただけあって、煌びやかでくっきりしている。

MTV時代の享楽も携えながらも、さすがは奇才リック・オケイセック、どこか捻れている。いかにもアメリカのラジオ受けしそうな、ポップでロックな仕上がりなのだが、どこか屈折していてそこがまたクセになるし、メロディの良いフックになっている。

時代性を考えると、彼らの音楽性は何からの影響なのか読み取りにくい。
ヴェルヴェッツやボウイの雰囲気もあるが、そこに70年代のストレートなロックンロールと80年代の鋭角ニューウェイヴとMTV期の煌びやかで厚かましいポップスを取り寄せて、絶妙な按排でブレンドしたようなその音は独創的で先鋭的で、でもなぜか普遍的。

ただ、音の厚みと圧だけはリックが言うように”Too Much”な印象(ジャケットの女性のメイクの濃さ同様)。これがナチュラル・メイクなつくりになっていたら、もっとぐっと掴まれた気もする。

ウィーザー(後にリックもプロデュースを担当)やザ・ストロークス(ギター・ワークとかは結構似ている瞬間あり)ら後続への影響も大きい本作は、リリース後じわじわとセールスを伸ばし、デビュー作にしてグラミーの新人賞にもノミネートされた。




「錯乱のドライヴ/カーズ登場」。B級映画の豪華二本立てみたいな邦題と、1978年を象徴したような(?)派手な出立ちのジャケット。
よくわからないけど、名盤然とした雰囲気が漂っていることはたしか。
ロンドンでレコーディングされたこともあってなのかどこか演劇風で、浮世離れしたような妖しいような感じがある。そして若干産業ロックっぽい音も忍ばせているところがアメリカ、ひいてはボストン出身らしさか。

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