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('04) The Killers / Hot Fuss

ラスヴェガス出身のザ・キラーズは、デビュー当初からポップ&キャッチーなシングル曲で英国から人気に火がつき、本デビュー作は全英チャート1位に加え、世界で700万枚を売り上げる大ヒットとなった。その成功の背景には彼らの”UK度”の高さがある。

アメリカのバンドでありながら、80年代のニュー・ウェイヴやシンセ・ポップを初めとしたUKロック(デヴィッド・ボウイ、クイーン、キュアー、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダー、U2、スミスetc)に強い影響を受け、その美学を受け継いでいる。

分厚いシンセ・サウンドとダンサブルなビート、インディ・ロックらしからぬどポップなメロディ・・・平たく言えばダサさぎりぎりの”デカさ”を誇る音を堂々と鳴らしている。しかし、メロディやサウンドとともに核となるブランドン・フラワーズのヴォーカルは、伸びやかな艶だけでなく、低音で淡々とした印象も与え、煌びやかな音の中に哀愁や空虚さを帯びた世界観をもたらしている。それはそのまま、ネオンとカジノと砂漠が象徴する彼らの故郷をも表しているかのように。

時折見せるゴスペル風なスケール感からはアメリカン・バンドとしての矜持のようなものを感じるし、斜に構えずにU2のようなスタジアム・バンドへの意欲を隠さない野心も、"Evirything Will Be Alright"なある種の能天気さと純粋さも、当時としてはむしろ斬新。

自らの楽曲タイトルそのままに「グラマラス・インディ・ロックンロール」な彼らの一歩目は、セールス的にはできすぎなくらい上手くいったのだろう(ピッチフォークが批判的なのは当然だけど)。しかし、一発屋では終わらない曲作りの上手さも光る。ゆったりとしたスケールの大きさが次作以降の音楽性を予感させる⑤や⑪でみせる緩急も素晴らしい。おみごと!

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