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('82) Tracey Thorn / A Distant Shore

エヴリシング・バット・ザ・ガール結成前、当時19歳の大学生だったトレイシー・ソーンがソロ名義でリリースした「ネオ・アコースティック」の名盤。トレイシーの憂いを帯びた芯のある歌声とアコースティック・ギターのみのシンプルなつくりの中に、孤独や無常、虚無感などが歌い込まれている。

後のEBTGのお洒落ジャズ&”擬似”ボサノヴァ・サウンドの兆しもあるが、あくまでギター弾き語り一本勝負の硬派な一枚だと思う。ヴェルヴェッツの名曲のカヴァー④は原曲に引けを取らない素晴らしい表現力だし、他の自作曲も珠玉のメロディが一本筋を通し、切なくも心地良く涼風のように過ぎていく8曲23分。

邦題「遠い渚」も、淡く余韻を残すジャケットも秀逸。不器用さも蒼さもそのままに音自体もアルバム全体の尺も含めて「やりすぎない」感が凄く良く、名盤としての屹立した存在感すら感じさせる。


7月最終日の朝。夏も折り返しを迎えるのかな(但し残暑は含めないものとする)。EBTG界隈の音楽は基本的にはハズレがない。ので、週末の朝、コーヒーでも啜りながら安心して聴ける。聴き流せるってのも重要。

このアルバムは夏の海のイメージだと思いきや、どちらかというと夏の手前や終わりの寂れた感じがして、”渚”つながりでニール・ヤングの「渚にて」にも通ずる憂鬱さや気怠さが耳を引く。

これからもたまに思い出しては聴くアルバムになるであろう、今年で40周年を迎えるエヴァーグリーンな名盤でした。

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