見出し画像

The Beatles / With the Beatles (1963)

歴史を変えたデビュー・アルバムからちょうど8ヶ月、この年2作目となるザ・ビートルズのセカンド・アルバム。

前作が「レパートリーの発表会」(ライナーノーツより)的な意味合いもあったのに対し、本作は同じ14曲(ちなみにオリジナル8曲+カヴァー6曲の比率も同じ)ながら「ビートルズ初の作品集」(同)と呼ぶに相応しく、アルバムが一つのアート作品だと知らしめた意味でも重要な一枚。

「明るくポップ」なカヴァーが常識だった当時、革新的といえる翳りを帯びた「ハーフ・シャドウ」の影のあるクールな画は鮮烈な印象を与えたし、全英1位の大ヒット・シングル3曲を収録しない一方でライヴで演奏していない楽曲も含めた本作は、持ち歌の寄せ集めではないアルバム単位での価値をレコードに付与した。

レノン=マッカートニーのソングライティング・チームの実力の向上とジョージ作品の初収録、そして早くもバンドとしての風格を備えた演奏とシンガーとしての表現力の豊かさと多彩さ。
ソウルフルでカリスマティックなジョン(明らかに別格)、バラードやコーラスでより映えるポール、実直なジョージ、ワイルドなリンゴと、4通りのヴォーカルを楽しめるのも素晴らしい。
リズム&ブルースもロックンロールもモータウン・ソウルも、カヴァー曲もろとも完全にものにし、一介のビート・バンドとしてではない”ビートルズ・サウンド”が確立し始めている。

前作よりは時間をかけたが、それでもわずか6日間、合計28時間のレコーディングの中にデビュー以来の成長の跡を刻みつけ、熱狂するイギリス中のファンの大きすぎる期待に、シングル3曲と本作で完璧に応えた彼らは、1963年末以降、海を渡ってアメリカの大衆をも熱狂させ、世界一のバンドへと突き進むことになる。「世界進出前夜」の一枚。



まずは何よりリンゴさんごめんなさい、写真サイズの都合でどうしても一人だけ外れちゃう…。

今日が60周年となるセカンド・アルバム。
何度聴いてもついつい体を揺らし一緒に歌いたくなる、楽しい作品。

もちろんオリジナル曲も良いのだけど、本作ではカヴァー曲の素晴らしさも目を見張るものがある。
⑥ではミュージカルの劇中歌でポールらしい「小品的楽曲での究極の美メロ」のお手本が示され、⑦ではジョンが自作曲の如きフィット感で歌い上げ("wait a minute, wait a minute, oh yeah"のところとか気持ちいいよね)、⑧ではチャック・ベリー御大に対抗すべくエネルギッシュなロックンロール・バンドぶりを見せ、そして最後を締める14ではジョンのシニシズムが鋭く炸裂する。

マージー・ビートもガールズ・ポップもモータウン・ソウルもR&Bもロックンロールも、当時隆盛したサウンド全てを取り込んだようなその音楽性。
それがそのままビートルズ・サウンドとなったのかもね。

なんだかんだでビートルズだな…。
そう唸らされつつ、また踊らされる夜。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?