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Bruce Springsteen / The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle (1973)

デビュー作からわずか10ヶ月後にリリースされたブルース・スプリングスティーンのセカンド・アルバムは、7曲47分の中にクラレンス・クレモンズら後のEストリート・バンドの面々とのエネルギッシュなバンド・サウンドを封入し、ジャズやソウル、ファンクにも接近した意欲的な作品。

タイトルどおり”ワイルドでイノセントなEストリートのシャッフル”が邦題の”青春の叫び”の如く鳴り響き、夏の夜、街の喧騒の中を生きる若者たちの群像と、そこに浮かび上がる孤独や苦悩、行き場のない焦燥感や閉塞感を掬い取り、丁寧に光を当てるストーリーテリングの力が溢れている。

他者の視点や感情の揺らぎを叙情的にも叙景的にも徹底的に掘り下げる作家性の一方で、ブルースの熱い歌唱はデビュー当初の”ネクスト・ディラン”や”新時代のフォーク・シンガー”といった縛りから完全に抜け出し、自分の足でしっかりと立ち、若さ(≒ロック)故の自由を謳歌しているようにも聴こえる。

特にB面3曲はそれぞれ7〜10分に渡るが、中だるみや尻すぼみなどは皆無で、張り詰めたテンションとエネルギーが途切れることなく、その充実ぶりには目を見張るものがある。

大物となる前の、いち若者としてのブルースの荒々しくも瑞々しく繊細な側面を美しく活写している傑作。




今年はスプリングスティーンの1〜2作目のリリースからちょうど50年にあたる年で、現にその2枚をリリース時と同じ10ヶ月間隔であらためて聴き返してみたのだが、2枚とも素晴らしいアルバムだし、2作の間で圧倒的に正しく成長していることもわかる。

彼には初めから、歌うべきものや語るべき言葉、鳴らしたい音が明確にあったんだろうな。
言葉数は多く、曲の時間は長くなっても、芯の部分が不動なので決して破綻することはない。

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