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Oasis / Definitely Maybe (1994)

言わずと知れたオアシスのデビュー・アルバムにして、90年代UKロックを代表する名盤。

ソングライターでありバンドの大黒柱のノエル・ギャラガーは、ビートルズ〜セックス・ピストルズ〜ストーン・ローゼズと受け継がれてきた英国伝統のメロディとアティチュードをビッグでタフなアンセムに昇華させ、分厚いギター・サウンドで塗り込められた”ウォール・オブ・サウンド”は全編を通してハードでサイケデリック(ときにドラッギー)に鳴り響く。
そして英国ロック界に久々に出現したカリスマ、リアム・ギャラガーの太々しいヴォーカルがジョン・レノンを彷彿させながら、言葉を叩きつけるようにがなっている。

本作はオアシスのある意味全てともいえる"Rock 'n' Roll Star"で始まり、厭世的で冷笑的になりかけていたロック・シーンをひっくり返し「生き続ける」ことを宣言した"Live Forever"、ラッドでタフな生き様を刻みつけた"Supersonic"、T.REXのパクり上等のギター・リフが走る"Cigarettes & Alcohol"、ポール・マッカートニーも唸らせた美しいメロディをサビに持つ"Slide Away"など、エポックメイキングな名曲が目白押し。
また、終盤の小品的な"Digsy's Dinner"や”Married With Children”なんかも良い味を出している。

ノエルの書く曲の素晴らしさはもちろん、リアムが歌うことで生まれる圧倒的な全能感と昂揚感は、閉塞感を打破するのにこれ以上ないものだった。

デビュー作らしい初期衝動と同時にオアシスの普遍性が刻まれた、歴代最高のデビュー・アルバムの一つである本作により、マッドチェスター・ブームの終息やアメリカから流入したグランジの栄枯盛衰の後のUKロックの荒野に、その名の通り砂漠のオアシスのような理想郷を打ち立てた彼らは、英国北部労働者階級の若者の視点のままロック・シーンにパンク以来の熱狂を取り戻した。





今年はオアシスの1stから30周年。
リリース日に合わせて今週中に書こうと思っていたら、一歩先に当人たちから明日何やら重大発表があるそうな。

というわけで無性に聴きたくなったので前倒しで取り上げてみました。
やっぱりいいよね。10代後半に死ぬほど聴いてたんだものね。
夏休みに祖母の家で絨毯の上に横になって、1曲ずつ歌詞見ながら中古のCDラジカセで聴いたことも思い出した。
もどかしくも希望を描いていた10代の頃の素敵な思い出。


音楽的なことでいうと、ビートルズというよりはむしろパンクとか(産業ロックになる前の)ハード・ロックとか90年代初頭のマッドチェスターからの影響が色濃く感じられる。
のちにノエルが(特に初期は)ビートルズよりもピストルズやローゼズに影響されたと言ってたのも頷ける。

90年代前半はプライマル・スクリームとかティーンエイジ・ファンクラブとかスコットランド勢が気骨あるロックをやってくれてたけど、ここにきてマンチェスターから普段着のジャージを着た眉太あんちゃん達(失業中)がこれだけラッドなロックを鳴らしたというのは大きかったわけで、まさに待望の希望の光だったんだろうな。

”ブリットポップ”なる狂騒の時代の幕を開けながら、本質的にはちっともブリットポップじゃなかったオアシスは、ロンドン・パンクでいうところのピストルズなのかもね(ちなみにブラーはクラッシュということで)。

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