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Elliott Smith / Roman Candle (1994)

1990年代を代表するシンガー・ソングライター、エリオット・スミスのファースト・アルバム。

友人と組んだバンド「ヒートマイザー」ですでにアルバム・デビューもしていたエリオットが、バンド用ではないアコースティック・ギター弾き語りの楽曲を、当時のガールフレンドに勧められて彼女の自宅地下室にてレコーディングし、デモ音源のままリリースされたという本作。

このレコードに収められたギターの一音一音やコードの運び、物哀しくも美しく透徹したメロディ、危なっかしさと人懐っこさを含んだフラジャイルな歌声からは、どこか喪失の予感や死の気配が漂っているように感じるのは、のちに彼が自ら命を絶ったことを知ってしまっているからなのか、

無題曲が9曲中4曲を占めるなど、手元にある自作曲を無造作に集めたであろう本作のどの曲においても、彼は孤独や失望に苛まれながら、儚い希望を見ているように聴こえる。




日々ひたすら音楽を聴きながら人生を送っていると、すでにこの世を去ったミュージシャン/アーティストの作品に触れることも多いわけで。

エリオット・スミスの作品を聴いているとき、上にも書いたように、無意識のうちにどうしても死の香りを感じ取ろうとしているのかもしれない。

でも、今こうしてあらためて聴き直していると、彼がこの世にいないことよりも、このレコードの中で彼が生きていることを、強く感じる。彼の息遣いに、爪弾かれるギターの音色に、生々しく触れることができる気がする。月並みな表現かもしれないけれど、紛れもなく彼の魂が宿っている。

世間と自分とのずれや違和感を抱え、その原因を探って自分を見つめて曲を書き、気づけば周囲に評価され、自分が望むどころか思い描いてもいなかった場所に連れて行かれ、ずれた自分のままで世間の視線に晒され、自分を失っていく。
彼にとってはある意味、売れない(もしくは食べていける程度の)バンド活動をひっそりと続けていた方が幸せだったのかもしれない。
でも彼の才能と時代がそれを許さなかった。
そして彼の音楽は、30年が経つ今でも世界中の多くの孤独な人々の心に浸透している。

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