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Manic Street Preachers / Gold Against the Soul (1993)

ファースト・アルバムでの”失速”と解散宣言の撤回を経てのセカンド・アルバムは、全体的にHR/HM寄りのサウンドにより(またしても)賛否両論を呼んだ。

リッチー・エドワーズ(とニッキー・ワイアー)の書く詞には絶望と悲嘆が前作より直接的な描写で綴られ、ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(とショーン・ムーア)によるメロディは湿り気のある哀愁を含みながら、エネルギッシュに前進する。ジェームスのエモーショナルな歌唱も全体に一本筋を通している。

大作志向のファーストから、より的を絞ったコンパクトなセカンドへと移行する中で、マニックスなりの音のうねりのようなものがしっかりと根付き、また、尺が短くスリム化されたこともあって聴きやすくなった印象。

ヒップホップのリズムやマッドチェスターのグルーヴも時折感じさせ、同時代性もわずかに帯びているが、その中で違いを生み出しているのがリッチーの切り裂くように迫るヒリヒリするような詞なのだろう。



マニックスは昔から知ってはいても、本格的に聴き始めたのはわりと最近だと思う。このハード・ロック的な音が重くて聴いていて疲れるので聴かず嫌いしていたのが正直なところ。
でも、2013年作の「Rewind The Film」での軽やかで風通しの良い音やポップで哀愁もあるメロディをすっかり気に入って、あらためていちから聴き始めようと思った。
順に聴いてみて思ったのが、確かに初期は音が胃もたれするくらい重くて辟易しかけるんだけど、ジェームスの熱いけどすっきりした声質と、前述のポップで哀愁を帯びた、ナチュラルにアンセミックなメロディに注目すると、凄く心地良く感じるということ。

リッチーというカリスマティックで危なっかしくて魅力的な陰影を持つ人間の存在と不在というのが、特に初期のマニックスにおける大きな命題だったのは言うまでもないことだが、リッチーの失踪が残されたメンバーに暗い影を落とす中、変わらないジェームスの声とマニックス調のメロディ。そして4人(3人になっても”4人”のまま)の強い結びつき。それが国民的バンドとまで呼ばれるようになる彼らの太く長いキャリアの幹となっている。


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