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Sufjan Stevens / Michigan (2003)

現代のアメリカを代表するシンガー・ソングライター、スフィアン・スティーヴンスが注目を集めるきっかけとなった3作目のアルバム「ミシガン」。

生まれ故郷であるミシガン州をテーマにした本作は、彼が企画した”50州プロジェクト”(結局2作で立ち消えになったけど…)の第1弾。
車と失業者とモータウンの”栄枯盛衰の街”デトロイトを抱え、五大湖を頂くミシガン州を舞台に、繊細でノスタルジックでカラフルな楽曲が連作短編集のように並ぶ。

アコースティック・ギターやピアノ、バンジョーを中心に、管楽器やエレクトロ・サウンドも取り入れ、カントリーやフォークといったアメリカン・ルーツ・ミュージックに根差したUSインディ・ロック(いわゆるアメリカーナ)の真骨頂といえる傑作。

ここでの彼の音楽性・文学性(作家性)の開花は、2000年代の(ピッチフォーク系)インディ・ロックの繁栄の基礎となっているのかもしれない。
そう思えるほどに充実して力のこもった、それでいて風通しも良いレコードだ。

各曲に出てくる地名などにちなんだ自作の掌編もあるのだが、それがまた素晴らしい。
小説家を志していたスフィアンが書く人生の悲哀や回想を温かく見つめて綴られる文章を読んでいると、こみ上げてくるものがある。
特に①⑤⑥⑪⑫あたりはたまらない。
”必読”の名盤。



アメリカ独立記念日。今年は”4th of July”という曲もあるスフィアン・スティーヴンスを取り上げてみる。
スフィアン自身の誕生日でもある7月1日にリリースされ、今年で20周年を迎える「ミシガン」を。
正式タイトルは"Sufjan Stevens Presents... Greetings from Michigan, the Great Lake State"で、「スフィアン・スティーヴンスが贈る、偉大なる湖の州、ミシガンからの挨拶」といったところか。
全15曲66分に渡る大作コンセプト・アルバムである本作は、CDのフォーマットによる作品として極めて優れており、僕は初めて聴いたときからいたく気に入った、今までもこれからも大好きな作品だ。

アートワークは絵も地図もミシガン州の観光パンフレットのよう。
楽曲の方もスフィアンの哀しみを湛え慈愛に満ちた声と、バンジョーの軽やかで切ない音色、抗いがたい美しさが溢れるメロディ・・・。
そして何と言っても、前述の詞と掌編。CDに同封の対訳に、このアルバム用にスフィアンが立ち上げたWEBサイト上の掌編の訳もあるのだが、ここに綴られている文章のまあ素晴らしいこと。
久しぶりにCDを買って、ブックレットを読みながら聴いてみてほしいアルバムです。

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