1番夢中で読んだ本

色々な本を読んできた。星新一で読書の面白さに目覚めてから、ライトノベル、純文学、ホラー、ミステリ。ジャンルを問わず、物語を摂取してきた。

大体、500前後の小説を読んできたのだが、その中でも群を抜いて夢中になって読んだ本がある。

飴村行「粘膜人間」である。

意外、と思った方もいたかもしれない。ちなみにこの本は第15回日本ホラー大賞を受賞している。
簡単に説明すると、
「とある兄弟の兄が、図体も態度もでかい弟を殺害するために◯◯と共謀する話」である。

〇〇が何かは、ぜひ読んでみて確認してみてくださいね(責任は取りません)

ともかく、そのアウトローすぎる場面のシークエンス、倫理的にアウトすぎる登場人物たちに私は目が離せなくなってしまったのだ。
読み始めて、読み終わるまで、私は一度も本を置かなかった。あんなことは後にも先にもない。

なぜ、あれほど惹きつけられたのか。勿論、本作が面白かったこともそうだ。しかし、それだけではあれほどの没入は説明できない。
恐らくは、当時の私の精神状態が、本作のなにかと共鳴したからではないか。

当時、私はとある理由でかなり憔悴していた。生きるのに絶望していたわけではないけれど、長い間、心が晴れなかった。
当時の僕の目標は「真っ当な人間になる」であった。
そんな感傷的な僕の中に、この小説は土足で入り込んできた。
この本には慰めも、憐憫もなくて、ただ野蛮な欲望と暴力的な世界が広がっていた。それが、なぜか当時は救いだったのかもしれない。

その後、粘膜シリーズが出ると必ず買い求めて読んでいるが、あの時のような感興はやはりないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?